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いまの右傾化は「自我の確立」によるもの

 いまの日本が右傾化している、民族至上主義の復活などと騒がれ始めたのはいつのことだったのであろうか。いまだに、過去の栄光を忘れられないジャーナリストや知識人と称される人の多くが、右傾化を批判する論調をやめようとはしない。だが大多数の日本人はすでにそのような与えられた「自己認識」や空虚で原理的な理想主義からは一線を画している。というか、意識がすでに離れているのである。だからといって、それが右傾化と呼ばれるような反動的な保守化なのかと言えば、必ずしもそうではない。これまでがリベラル(理想主義)とは名ばかりの左傾化だったのだから、真ん中に来るのも右によることではあるが。

 失われた20年は国力を低下させ、経済的には不況を生じさせてしまったが、同時に大方の日本人は、自らの自我(アイデンティテイ)を自らの手で確立する方向へと動き出した時期でもある。社会に不条理が蔓延し生活が貧困によって脅かされるとき、人間は自らの存在意義を考えることになる。それはバブル景気で浮かれているときには、ほとんど起こらないものであろう。


 ネット上での言論が右寄りだと騒がれたのは、大手新聞やテレビ等既存のメディアに関わる既得権者達と違い、それまで発言の場を与えられていなかったサイレント・マジョリティ(無言の多数派)が、発言の手段を手に入れて一気に発言しだしたからに過ぎない。既存メディアに不満を持つ人々が、それとは反対の意見表明をしたがるのはごく自然の流れである。そこには反動もあっただろうが、同時に発言を重ねることで自らの考え方を整理し、もう一度考えを深めることにも役だったのだろう。そこからも、自己を見つめ直す機会が生まれたのだ。悪名名高き2チャンでも、1000件にひとつくらいはまともな発言がある事は注目に値するだろう。


 集団安保法案反対の学生達の動きを賞賛するごとく取り上げるメディアは、ネット上での過激発言や書店にあふれかえる日本賞賛本の多さについては、ほとんどまともな解説も出来ていない。だからこそヒステリックに右傾化と叫ぶのである。法案反対の若者のなかには、むしろ愛国心の芽生えから反米となっている人も多くいるだろう。その意味で、本来保守の安倍政権が掲げた親米路線が、むしろ反発をかっていることは皮肉である。そのことを政権側もデモ隊側もよく理解できていないところに、いまのこの国の課題がある。


 むろん現在の日本人としての自我の目覚めがすべて正しい方向を向いており、賞賛すべき物とばかりは言えないだろう。なぜなら日本人は極端に走りやすく、そのために振り子は大きく振れすぎることがあるからだ。いま最も必要なことは、自我の確立を強く望む多くの人々に、正しい方向性を与えることだろう。個人の自我が正しく確立されたとき、全体の民族自我もまた正しいものとなる。そのうえで、新たなる創造をうみだすための破壊を着実に進めるときが来ている。

 日本の理想的な将来像をかかげながらも、現実を冷静に見つめた実現可能な方策をきちんと提示していく。その安心感のなかで、人々は自らの「個の成立」と「自我の確立」を進めていくことが出来よう。それがゆがみの無い民族自我を確立させる事へとつながっていくと信じている。

平成28年1月4日(月)
秋山鷹志