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少女誘拐で見落とされている二つの重要な課題

 埼玉県朝霞市の中学生女児の誘拐監禁事件では、少女の強い精神力と機転によって、脱出に成功し犯人も逮捕された。当初の少女にも若干の非があるかのような、ばかげたコメントはさすがに影を潜めたようである。だが、このような少女への二次加害とも云えるコメントを垂れ流し続けたメディアの責任は重い。このような事こそ、なんでもすぐに騒ぐ人権論者が、もっと騒ぐべきだと思うのだが。

 それはさておき、これだけの大きな事件で、しかもこの種の事件が残念ながら日本初ではないという現状からして、もっと真剣に考えねば成らない課題が他にも多くある。特に今すぐ検討して始めなければならないと思う事を二つ取り上げてみたい。

 一つ目は、犯人逮捕の為の有効な手段の獲得を真剣に考えるべき事。
 フランスのパリとベルギーで起きた連続テロ事件。欧州を震撼とさせ、フランスでは4ヶ月以上が経過したいまも、非常事態宣言が継続されたままである。そして、テロ防止のためであれば、欧州の象徴とも言える人権と自由が、多少束縛されてもやむを得ないという考え方や空気が漂っている。専門家ですら、一時的には自由等が制限されるのもやむを得ず、状況によって元に戻すべきであると主張している。幸いなことに日本では、まだこのような大規模テロが発生しておらず、このような議論は見受けられない。だが、実際には、オームによるテロが発生したとき、未然に防げなかった警察等への批判が噴出したが、有効かつ具体的な対処法も議論されることがなかっただけである。

 今回の事件と直接関係が無いように思うかも知れないが、実は「権利の制限と犯罪防止の関係」という意味では、全く同じ課題を含んでいる。今回の犯人のように高学歴で、あらかじめ完全犯罪を目指して、用意周到に計画された犯行が行われた場合、いまの警察は、まともな対処法、犯人追及方法を持っているのであろうか?延べ7500人の警察官が動員されて、捜査に当たったという。だが、犯人の容疑者リストに、この犯人が含まれる事は全く無かったのである。つまり、少女が自ら逃げ出さなければ、警察は犯人にたどり着けなかった可能性が高いと云わざるを得ないのである。

 県をまたがる広域性、全く無関係な土地をネットで選択、入念な下見、接点のない被害者等、これまでの警察の捜査の常識が全く通用しない相手、犯罪である。今後も起きるであろう未成年者への性犯罪や、誘拐監禁などの新しいタイプの犯罪に、捜査が追いついているとは思えない。

 たとえば、仮に子供がGPS発信器を持っていたとしても、都会の集合住宅に監禁された場合、建物を特定できても、すべての部屋の室内を強制的に警官が立ち行って調べることが可能なのだろうか?住民に拒否されたら、無理に出来ないのが現状であろう?一刻を争う場合には、強制力が必要だと云うことは、多くの国民が認めるであろう。だが、実際の法律を作るまでのコンセンサスは得られていない。
 むろんこれはひとつの例であって、肝心なのは、どういう捜査手法が必要になるのか研究して、必要があれば一刻も早く国民に提示することであろう。


 もうひとつは、これも何度もブログなどで取り上げてきたが、このような特殊とも云える犯人をより深く研究する事である。子供への性犯罪の犯人分析でも、日本は欧米などに比べて圧倒的に遅れているという。これまで、欧米型犯罪が少なかったからかも知れないが、すでにそんな時代は過ぎ去っている。特に、犯人の人格とその人格形成の環境、つまりは家庭や置かれていた教育環境などである。もちろんこの種の研究が、間違った方向に行きかねない危険性は軽視しては成らないのだが、だからといって、手をこまねいていて良い問題は無いはずである。ここでも、個人の人権との関係が出てくるのだが、だれが、どのようにして、どこまで研究するのか、これまた国民的コンセンサスをとるべき時であろう。


 買い物に行ったとき、おつりを少女がかすめないように、レシートを死にものぐるいで回収したという犯人。偶然部屋で見つけた500円玉を大事に隠し持っていた、それで逃げ出す準備が出来たのである。命の小銭をどういう気持ちで握りしめていたことか、考えるだけで胸が痛くなる。こういう被害者を二度と出さないためにも、犯罪者の未然防止と素早い逮捕の両面における、真摯な検討が必要なのである。いますぐに。

平成28年4月4日(月)
秋山鷹志