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トランプ発言を日本独立の奇貨とせよ

 国家・国民の真の利益よりも、組織や己自身の利益しか考えないでこれまで生きてきた戦後の政治家や官僚がいまだに闊歩する日本社会。それに迎合するメディアや多くの組織の人々。さらには、その状況をおかしいと考える事すら放棄し、自己保身だけに邁進する多くの日本人。

 これでは、戦後アメリカの属国としての立場から抜け出すことなど、想像だにしがたいのだが、いわば奇貨は相手からやってきたと言えるだろう。共和党候補が確実と成りつつあるアメリカ大統領候補のトランプは、素人故になのか、これまで一般のアメリカ人に教え込まれた常識通りの発言を繰り返している。日本への防衛費用全額負担要求と核武装容認論である。

 これまで政治の世界に無縁だった彼が、果たしてアメリカを実質的に支配してきた一部の人間達が作り上げた世界戦略をどこまで承知した上で、あのような発言をしているのかわからない。だが、間違いが無いのは、そういうこれまでの支配層の日本を属国として支配したままにしておくという考え方と、トランプをはじめとする一般的なアメリカ人の考え方とが、もはや一致しなくなっている事であろう。

 これまでのアメリカの世界制覇の具体策は、国際社会でそれなりに機能し、恩恵の一部をアメリカ国民に分配することで、アメリカンドリームなどという国民懐柔策が通用してきた。だが、行きすぎた覇権主義がもたらした多くの困難や問題が、いまや他国だけでなくアメリカ自身にまで及んでしまった。これこそが、アメリカ文明の衰退への序章なのかも知れない。ならば、日本が現在の属国の立場から真の独立をなす絶好の機会でもある。むろん、今回トランプが本当に大統領になってしまうと、日本はより厳しい立場に置かれるだけで、さしたる利益は無い。だからこそ、いまがその最大のチャンスなのである。


 アメリカの日本属国政策とはいかなるものか。なかなか巧妙にして複雑なので、説明は出版されている各種の書籍に任せるとして、ここでは安全保障上から見た政策を、おおざっぱに述べてみよう。それは日本に自主防衛力の保持を許さず、常にアメリカの軍事力が無ければ安全が保てない状態にしておくことである。そのうえで、それをてこに日本にアメリカ従属を強いてきたのである。日米安保に基づく在日米軍とは、日本防衛のために存在するのでは無く、アメリカの極東政策の為と、日本の軍事力増強を許さないお目付役として存在している。
 これらの話は、少し前までは、一部の民族主義者や右翼勢力の作り話とされていたのだが、多くの研究者による地道な努力の結果、それを証明する公的な資料が次々と発見されている。年数がたつと秘密情報も公開するというアメリカの最後の良心が、ここでは役立っているのが皮肉である。

 自衛隊の実力は世界でも遜色が無いなどと喧伝されているが、それは隊員の質や一撃目の攻撃に対する防衛力など、ほんのわずかの部分の事に過ぎない。いかなる反撃能力ももたず、全面攻撃されれば、米軍の力なしで自国を防衛する事は出来ないのである。そのようにアメリカは、日本の軍事力をいびつで脆弱なものにおさえつけてきた。そしていまも尚、それを続けている。このことについては、1990年当時のアメリカの責任者の発言も公にされている。
 例えば韓国にすら許したミサイルの保持を自衛隊には許していない現実がある。憲法の制約で防衛の兵器は持てても攻撃の兵器は持てないなどと云う、ばかげた嘘っぱちを日本人にすり込んだのがアメリカだったのか、それとも日本人の中にいる反日勢力だったのかは、よくわからない。しかし、それはアメリカにとって好都合だったのである。日本は、自国の領海内の端まで届くミサイルすら保持できていないのである。海外派兵などという前に、これで一体どうやって自国防衛を成すというのだろうか。核など持たなくても良いから、まともな軍事的防衛力を整備すべきである。

 したがって、トランプが、日本にも核武装を許すという発言は、単にそれが核の拡散という立場からだけでは無く、日本の自主的な防衛力整備を許すと云うことであり、これまでの日本属国政策とは全く相容れないものなのである。実際、問題となった集団的自衛権の容認の内容とは、要するにアメリカに軍事的にも荷担しろというだけでは無く、日本防衛は日本自身でもやれと言い出したことと同じなのである。この流れを決して止めては成らないのだ。そして、矛盾することなのだが、西部邁が指摘しているように、アメリカのばかげた戦争行為への荷担を拒否するには、自国の防衛を自らなせる力を日本が持っていない限り実現できないという指摘は、その通りだろう。だからこそ、いまやるべき事は、一刻も早く、自衛隊の戦力整備をきちんとおこない、まともな防衛力を保持することなのである。

 日米地位協定が改定できないのも、それならアメリカは日本を守ってやらないぞと脅されるだけで、交渉すらしなくなる政治家や官僚の体たらくのせいなのである。にもかかわらず、わざわざアメリカのこの脅しを後押しするような勢力が、日本の実質的な統治に影響を及ぼしている。メディアも知識人も、学者も政財界も皆、同じ穴の狢である。これこそが、集団農耕型気質の人間が権力を握るとき、国の方向がおかしくなり存続の危機すら招いてしまう、その恐ろしさなのである。戦前の軍部独走も全く同じ物であり、いまも尚それが改まらずに、同じ事を繰りかえそうとしているのだ。

 自衛隊の戦力の整備というだけで、思考を停止してしまうような洗脳もまた、はじめたのはアメリカだと云うことぐらいいい加減知識として知ろう。そのうえで、愚かで自己本位な集団農耕型気質の多くの日本人が、その洗脳を自ら続けてきてしまったのである。これでは、オーム信者と変わらない。

 自衛隊の戦力だけの話では無い。あらゆる分野において、日本がこの地域で覇権を握ることを許さないというのが、アメリカの一貫した政策なのである。なら、なぜ中国にはそれを許したのか。長くなるので触れないが、結局アメリカ人は、力の信奉者であり、力を持ってしまったものには、それなりに対応するのである。


 いま日本が成すべき事は、あらゆる分野において真に独立した行動がとれるような力を獲得することである。その最も目に見えるものが、自衛隊の戦力整備だと云うだけの話である。

平成28年5月5日(木)
秋山鷹志