文化

文化と文明 補章・外伝

オン草紙
【外伝】同化せざる民の変容:
「同化できない」から「同化しない」へ

 いまヨーロッパの一部で起きている事は、決して対岸の火事では無く、人類がこれから新しい文明を構築していく上でも乗り越えねばならない大きな課題である。

 移民や難民の同化せざる民について、本文で述べた。そして、受け入れ各国の同化政策の元でも、無くならない差別感情が、同化せざる民を生み出していると。だが、それは、同化したくても同化できないでいる人々を中心とした物であった。だが、いまおきていることは、それとは異なり、むしろ事態は悪化していると言えよう。


 イギリスでは、EUからの離脱を問う国民投票が迫っているが、離脱派は少数との当初の予想から、少し様相が変わって来てしまった。それだけ、中間層以下の国民の怒りや不満が蓄積されていると言うことであろう。だが、このような不満は、受け入れ側の国民だけではなく、移民・難民側にも高まっている。

 「中道左派にはもう頼れない」欧州移民の悲哀
 『オランダでは、ムスリムや少数派民族を“代表”する民族政党が台頭』

 これまでは中道左派の政党に投票していた移民の多くが、中道左派への疑問から自分たち民族の少数政党を立ち上げようとしているのだ。これはつまり、移民先に同化しようと努力するよりも、自分たちの民族意識を維持しようとする気持ちの表れでもある。それは結局、国家の中での同化せざる民を、よりはっきりと際立たせる事に他ならない。

 移民などの特定民族が多く集まる小さな自治体では、すでにその民族の議員が誕生している。その人達が、その地域の多数派たる移民に有利な政策をとることになったら、事態は最悪のものになるだろう。皮肉にも、欧州が戦争を避けるために作り出したEUの理念(人々の自由な往来)が、逆に再び内戦の火種にも成りかねない問題を生み出す事になっている。

 多発するテロという段階で止められればまだましで、テロ行為が引き金となり、国内での民族間の衝突にまで進めば、内戦、さらには国家間の戦争にすら発展しかねないのである。「同化できない」民から「同化しない」民への変貌が、いまヨーロッパにおいて静かに進行しているとするならば、それは世界中の問題でもある。
 「同化せざる民」という概念の重要性は、増すばかりに思える。


参考資料
文化と文明 第5章 文化と文明の衝突―同化せざる民

平成28年6月17日(金)