第二部 食料文明国家構想(食が作る新しい日本)

地方都市の再生

― なぜ地方は衰退し、どうすれば再び輝くのか ―

はじめに

食料文明国家を語るとき、避けて通れないテーマがあります。それが地方都市です。
現在の日本では、多くの地方都市が人口減少に直面しています。
   商店街の衰退
   空き家増加
   学校統廃合
   公共交通縮小
   若者流出
こうした光景は全国で見られます。

しかし本当に地方は不要になったのでしょうか。答えは違います。
むしろ食料文明国家にとって、地方は国家の土台そのものなのです。

地方衰退はなぜ起きたのか

戦後日本は、工業化と都市化によって発展しました。
企業は都市へ集まり、大学も都市へ集まり、若者も都市へ集まりました。
結果として、地方から人口が流出しました。

地方衰退の流れ

工業化
都市集中
若者流出
高齢化
人口減少
地方衰退

都市は本当に効率的なのか

都市集中には利点があります。
   仕事が集まる
   情報が集まる
   人材が集まる
しかし、効率には代償があります。
   通勤ラッシュ
   高い住宅費
   子育て負担
   人間関係の希薄化
GDPだけでは見えないコストが存在します。

地方は文明の生産基地

第一部で学んだように、文明の土台は食料です。そして食料は地方で生産されます。
   農地
   森林
   河川
   漁場
これらの大部分は地方にあります。つまり、地方は文明の周辺部ではありません。
文明の中心部なのです。

地方の役割

地方
食料
国民生活
文明維持

地方都市の役割を見直す

地方再生というと、よく人口増加が目標になります。しかし、人口だけを追いかけても解決しません。
重要なのは、地方都市の役割を再定義することです。
例えば、
   食料供給拠点
   教育拠点
   医療拠点
   防災拠点
   文化拠点
としての役割です。

コンパクトシティという考え方

人口減少社会では、すべての地域を同じ形で維持することは困難です。
そこで重要になるのが、コンパクトシティです。
   病院
   学校
   行政
   商業施設
   住宅
これらを適度に集約し、暮らしやすい地方都市を作るのです。

ここで、勘違いされやすいのが、小型の東京を地方に作るのが、コンパクトシティだとの考え方です。結果として小型東京であっても、肝心な事は、その中身です。核となる産業や行政をそれぞれ別々のものを持つことです。

例えば、三権分立なら、司法行政を東京から切り離すことです。重点的に投資する先端分野や業種をきめたのなら、そのそれぞれを核とする都市・地域を作ることです。この事をきちんとやらないから、これまで行われてきた分散化・地方化は、失敗の連続なのです。

食料産業都市へ

地方都市の最大の強みは、食料生産地に近いことです。
今後は、農業だけでなく、
   食品加工
   冷凍保存
   物流
   ブランド化
   輸出
を組み合わせた 食料産業都市 を育成する必要があります。
つまり核となる産業分野をもちながら、同時に、食料産業都市の顔をもつ。その二面性が重要なのです。

食料産業都市

農業
加工
流通
販売
地域雇用

デジタル化が地方を変える

かつて地方は不利でした。情報が都市に集中していたからです。
しかし現在は違います。
   インターネット
   AI
   リモートワーク
   オンライン教育
によって、地方でも高度な仕事が可能になりました。
これは文明史的に見れば、大きな転換点です。

地方の新しい武器

通信技術
距離の壁縮小
地方でも働ける
人口定着

若者が残る地方へ

若者が地方を離れる理由は、地方が嫌いだからではありません。未来が見えないからです。
   仕事がある。教育がある。医療がある。文化がある。
そうした環境が整えば、地方に残る若者は増えます。

地方再生とは、若者に我慢を求めることではありません。地方で夢を持てる社会を作ることです。

地方は文明の保険でもある

もう一つ重要な視点があります。それは危機管理です。
大都市に人口や機能が集中しすぎると、災害や有事の際に大きな被害を受けます。
地方が元気であることは、国家全体の安全保障にもつながります。
ですから、同じ自然災害が疑われる地域内で、副都心をつくるなどというのは、この事を全く無視した考え方だと言えます。

多極分散国家といっても、その中身のありようが問題なのです。

食料文明国家の地方像

食料文明国家が目指す地方は、昔の農村へ戻ることではありません。
最新技術を活用しながら、
   自然と共生し、
   食料を生み出し、
   文化を育む地方です。
都市と地方が対立するのではありません。都市と地方が支え合う社会です。

まとめ

地方衰退は、日本文明の土台が弱くなることを意味します。すでにこの40年、日本は新しい文明をほとんど生み出せていません。
地方再生は地域振興策ではありません。国家戦略です。
食料を支え、文化を守り、人々の暮らしを支える地方。
それを再生することが、食料文明国家への重要な一歩なのです。