烈風

海洋観光C 水陸両用車


 新しい海洋観光として、海と島しょを活用する観光を提案した。(海洋観光@「海洋観光の開発」はこちら)そのなかで、使用されるさまざまな船舶等について、前回までに海洋観光母船海中遊覧艇をみた。残りの水陸両用車と小型旅客機について見てみよう。

 日本でも、水辺を観光資源とする地域では、さまざまな水陸両用車の導入が行われている。ただ、まだまだ一般的とは言えないようである。まだ物珍しさの対象であり、一般の自動車やモーターボートのようにはなっていない。この海洋観光用に使用する水陸両用車は、特定の目的を持った限定機能のものが考えられる。いいかえれば、さまざまな用途の水陸両用車があって初めてこの海洋観光が成立するのだろう。

 目的別に見ると、大きく島しょへの上陸用と島での滞在用、さらに海上交通用とに分けられる。

 どのようなタイプが考えられるかと言えば、次のようなものがある。

1.海岸上陸用水陸両用車(小型、大型)

  小さな無人島などでは、大きな母船を接岸することは出来ない。通常ならば小さなボートなどに乗り換えて島に向かうのだが、そこをもう少し便利にするのが、水陸両用車である。母船からそのまま海に入り、島の海岸をそのまま上陸していける。

水陸両用車1

  少人数での上陸や滞在には小型のタクシー型が、大勢ならばバス型が利用されることになる。これらは、短時間滞在ようで、特別な設備等は有しないものになる。

2.岩場上陸用水陸両用車

  日本の小さな無人島では、上陸しやすい浜辺や海岸のない島が多い。ごつごつした岩場が海岸にまで来ているしまでは、普通の水陸両用車でも上陸は難しい。そこで、岩場上陸用の水陸両用車が必要になる。海岸の浅瀬などに停めて、そこから上陸用の橋を渡す機能を持たせた水陸両用車である。
 軍の装備には、橋をその場で渡すような特殊車両もある。架橋戦車(かきょうせんしゃ)と呼ばれる各国が様々なものを保有しているものや、自衛隊の自走架柱橋などがある。この81式自走架柱橋は、高低差のある場所や陸地にも架橋可能な特徴をもつが、この機能を上陸用に変えて水陸両用車にすれば、完成である。

水陸両用車2

 人間が渡るだけであるから大がかりなものは不要で、それより自動で簡単に橋を渡せるものが必要になる。目的に合わせて機能を限定すれば、コストも安くすむ。仕様を欲張らないことである。

3.キャンピング用水陸両用車

  無人島に1泊以上の滞在をするために、キャンピングカー機能を兼ね備えた水陸両用車。当然、海岸からの上陸型になるだろう。海上でのスピードは犠牲にされても良いから、少しくらいの岩場なら上陸できるキャタピラー装備車なども考えられるだろう。

4.滞在支援用水陸両用車

  無人島などに上陸したり、滞在したりする際に必ず必要となるのがトイレ等である。上陸用無人島として開発された島には、あらかじめトイレやゴミ専用の滞在支援用水陸両用車を準備しておくことも考えられる。こうすれば、長期滞在者でも、キャンピングカー機能を持たない普通の水陸両用車で島に行くことが出来る。

水陸両用車3

  島に常設の設備や建造物を作ることは望ましくない。結局それは自然を破壊し、島の良さを失わせてしまう。固定の設備から頭を切り換えて、移動可能な設備にすれば、月に一度とかそのまま回収して新しい車両と交代させるだけで、環境の保全も図られる。新しい発想は、新しい産業の元にもなる。

5.母船往復用水陸両用車

  係留型母船と近くの島(または陸地)との間の交通手段に使われる水陸両用車。バス代わりなので、海岸上陸用の大型車がそのまま使用されるかもしれない。

水陸両用車4

 いずれは、個人が所有する水陸両用車を母船に積んで、無人島近くから個人が各自運転していくような時代も来ることであろう。日本では規制が多すぎるが、海外なら意外と早くそんな時代が幕を開けるかもしれない。

6.小型旅客機

 水陸両用車に加えて、開発を考えたいのが、50人乗り程度の小型旅客機である。ホンダジェットと三菱MRJの中間機種になる。長期間の船旅が苦手な日本人には、海洋観光ツアーへの途中乗船や途中下船のサービスは、かなり有効なものになろう。その時、小さな飛行場でも手軽に利用できる安価な飛行機が必要になる。LCCは基本的には大量輸送によるコストセーブの考え方である。これでは、小笠原諸島を始め、小さな島々に手軽に飛行機を飛ばすことにはつながらない。問題は、安い機体、安い運用コストである。

小型旅客機

 高価な航空燃料ではなく、別の燃料や、バッテリーとのハイブリッドなどを採用することで、極力安い運用コストを実現することは、不可能な事ではあるまい。バッテリーの充電は島の自然エネルギーから作れば、エコと同時に島のビジネスにもなる。発想を変えて新しい技術で、新しい小型旅客機を飛ばしたいものである。

 戦後長く禁止させられていた航空機産業。ようやく離陸しようとしているが、同じものを作っていては能がない。新しい翼なら、世界に羽ばたくことができるだろう。あ、むろんいまのも作りながら!

 産業との関係



 水陸両用車と言えば、最近自衛隊が島嶼防衛(奪還のため)用としてアメリカから水陸両用強襲艇(AAV7)の導入を開始した。30年以上も前の古いものですでに生産終了をしているため、他国が購入したよりもはるかに高いとんでもない金額で購入するのだが、その是非はまたにして、これが典型的な水陸両用車と言える。軍事用の水陸両用車はその要求性能が高いために、なかなか新しい開発がままならないようである。高性能の割には台数がいるので、コストに合うものが出来ない。そのため、アメリカでもAAV7の後継車両EFVの開発がコスト高で中止(2011年)している。
 そんな中、最近日本のメーカが新しい水陸両用強襲艇の開発に乗り出すかもしれないと言うことで、ニュースになった。それだけ日本のメーカは、技術力を持つ証でもある。ただ、高いのが玉に瑕だが。

 軍事用水陸両用車からみたが、産業としては、民生用の水陸両用車は先進国で様々な種類のものが作られており、遅まきながら日本でも一部がようやく日本企業により製造されるようになった。バブル崩壊以降、技術はあるのに、新しい産業を興す力がほとんど失われてしまったかの感がある。ドローンでもロボットでも、産業として成立させることに常に遅れをとっている。このあたりで意識を変える必要があるだろう。

水陸両用車のように自動車産業と造船業との両方にまたがる複合的な産業は、今後ますます増えていくことであろう。そのなかでも、海洋大国、浅いが急な河川の多い日本においては、十分に産業として成立するであろう。
 特定の業種に集中して過当競争ばかりを生む国内の産業構造の改革も言われて久しいが、合併すらままならない状態にある。つぶれる前に、挑戦すべき時が来ているのだが。


 海洋観光で使用される船舶等も、すべて軍事用との間で技術的な関連性がある事を見てきた。この軍事と民事の産業の関係についてはまた別に取り上げたい。

2015.07
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