烈風

iPS臨床試験への有料参加


 いまでも、いわゆる最新医療には健康保険がきかないために、高額な負担が必要となる。何でも保険という考え方はどこかおかしいと思う反面、難病などで苦しむ人が経済的にも苦しんでいるのを見るとどうにかしてあげたいと思ってしまう。非常に難しい問題である。ただ実際に高額費用が発生する限り、それを無視することは出来ないだろう。


 アベノミクスの恩恵で、日本企業は史上最高とも言える利益を獲得し、その内部留保額は340兆円にものぼるという。そのくせ、投資額はたかだか20兆円でそれも10兆円も減少している。なかでも、日本の産業界のiPSへの冷淡な対応には、腹立たしくさえある。 儲けた金を海外にばらまくかのようなM&Aで、大金を使う日本の製薬企業。その一方で、iPSを利用した研究や開発にほとんど投資をしていない。最近ようやく大手の1社が、共同研究などで合意したと報道されたが、たかだか200億である。いちはやくiPSを新薬開発に利用し始めた企業は、中堅の製薬会社で、その親会社は他業種の会社である。意識の違いとしか言いようがない。

 山中伸弥が、iPS細胞の研究でノーベル賞を受賞してから、すでに何年も経過した。だが、その後のめざましい進展のニュースは、あまり聞こえてこない。むろん彼自身、実用化には何十年とかかるだろうと言っているくらいなので、時間がかかるのは理解できる。それでも頑張っているのは、基礎研究の研究者ばかりでは情けないだろう。日本の産業界の奮起を促したい。

 このような状況の下ではあるが、iPS細胞を使った網膜再生の臨床試験が行われてから一年が経過し、患者の状態は経過良好との発表が成された。明るいニュースだが、本来もっと多くの臨床が予定されていたと記憶している。この一件しか発表が聞こえてこないのは、STAP細胞騒ぎが少なからず影響したのであろう。


 新しい治療法でも、新薬でも、必ず臨床試験が必要になる。ここに膨大な人手と費用がかかる。ここに、全く新しい発想による、有料参加という考え方を導入できないだろうか?有料でも新しい治療法を望む人がいるように、たとえ有料であっても、それがまだ未知の臨床試験であっても参加してみたいと考える人は、一定数いるのでは無いだろうか。そういう人が、積極的に臨床試験へ参加出来る仕組みを考えてはどうかと思う。現在も、臨床試験参加者に対する対価が支払われているが、それとは別の発想である。もっと、患者側からの積極的な参加を受け入れる仕組みである。

 むろん臨床試験に合う患者かどうかの判定、危険性への説明と承認など、当たり前であるがきちんと整備された法律とガイドラインにより行われなくては成らないが、現状の研究費等だけでiPS細胞の臨床試験を行うことには、金銭的な壁があるのも事実である。有料で一件でも多くの臨床試験を出来るだけ早く行うことは、結局研究・開発を先に進めることにつながり、いち早い実用化にも寄与するだろう。

 もちろんすべての臨床試験に導入することは、新たな問題を生み出しかねないので、iPS細胞など限定した臨床試験の範囲にすべきなのは言うまでも無い。金持ちだけ助けるのかという批判も起こるかもしれない。それでも、大きくみれば出来るだけ早く患者に救いの手をさしのべることにつながるだろう。知恵のだし所かと思うのだが。小さくても実効性のある具体策を提案することこそ、政治家の役目であろうに...。

平成27年10月20日(火)

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