生物保護と捕獲にも柔軟性を


 奄美大島は、沖縄に近いが鹿児島県である。いまそこの灯台が崩壊の危機にある。理由は、なんと増えすぎた野生のヤギ。もともと人間が持ち込んだヤギが野生化して、天敵がいないのでふえてしまった。その結果、山肌や岩の植物が食べられることで、がけなどの崩壊が起きているのである。灯台のたつ地盤も侵食されて傾き、灯台はまさに倒壊の危機にある。 東京都が購入する尖閣諸島でも、同じくヤギが島を占領しているという。

 増えたのなら、殺せばよいはずだが、銃による猟は許されず、生け捕りの捕獲が行われている。その結果、かえって、捕獲にかからない強い固体が生き延び、しかも食料も間引きされた分多く取れるので繁殖が盛んになったのではないかと言われている。

 自治体が少ない予算の中から捕獲費用を捻出して毎年捕獲を続けているが、なかなか被害を防げるまでにいたっていない。これから、奄美を世界自然遺産に登録しようと目指しているのに、ヤギによって貴重な奄美固有の植物まで絶滅しかねない状況にある。

 小田原でも餌付けをして人間を怖がらなくなったサルの群れが街に出て、大変な被害をもたらしている。しかし、おどかすだけなのと、近隣の自治体との協力体制が行われていないなどから、被害は一向に減らない。つい最近見た報道では、えづけ禁止がきいて、観光客の被害はなくなったとか。かわりに、土産物店が、毎日決まった時間に襲われていた


 外来種が、日本固有種を駆逐してしまう例も、日本各地で起きている。これだけ、問題が大きくなりながら、保護と駆除の柔軟な対応ができているとはお世辞にもいえない。やり過ぎないような歯止めをかけながら、各地の実情に応じた柔軟な対応を地元に任せるべきではないだろうか。

 硬直的なお役所仕事や法律の運用が、あとで後悔する例は数限りなくおきている。もういいかげんで、大岡裁きのような柔軟な運用を考えるときにきている。

 むろん、問題を引き起こした根本原因は、ほとんど人間の側にある。ルールをきちんと守るという教育ももっと厳しくしなくてはならない。今の日本社会は、勝手なことをやったやつ勝ちの風潮がはびこりすぎている。せっかく世界自然遺産に登録された小笠原諸島では、増加した観光客のなかに貴重な山の樹木を折るという許されざる蛮行をするものまで早くも出ている。これでは、いくら見てもらいたくても、一般に開放することも出来なくなる。

 行政の運用が、柔軟に行われる社会がのぞまれている。

2012.05 改
秋山鷹志