働く苦しみ


 2011年度の大学新卒者の就職内定率が最低(68%)となり、社会問題であるかのごとく騒がれている。問題の本質が、少しずれているように思うのだが。

  2011年大学生新卒の求人倍率(平均1.28倍)
   5000人以上の大企業   0.47倍
   1000-4999人の企業      0.63倍
    300-999人の企業     1.00倍
       300人未満の企業    4.41倍

  出典:リクルートの大卒求人倍率調査
  http://c.recruit.jp/library/job/J20100421/docfile.pdf

 求人倍率は1.28倍、つまり働く場は充分にある。大卒だから大企業が当たり前であるかのような錯覚や、汚い、給料が安い、つぶれると言うイメージの中小企業を大学生が敬遠しているだけなのである。

 それを、マスコミも「ミスマッチ」などと、学生には全く非がないかのような報道をする。ここには善意と言うよりも、高見からの優越的視線が充満しているようにも見える。

 むろん、イメージだけではなく、実態として大企業と中小企業との格差は大きなものがあるのも事実である。
 だから、大学生だけに非があるとは言わない。大学を含めた教育の問題、企業の体質の問題、企業間格差の問題など、問題の本質は根深く簡単に解決がつくような問題ではない。

 だが、だからといって、働くことは苦しいことだけど頑張る、生きるために一所懸命に働く、こういう多くの人達がいることを、若者にもきちんと教えるべきなのではないだろうか。


 その重労働と低賃金のため、介護・福祉の業界は、慢性的な人手不足である。それでも、働いている人達はいる。大学生が就職できないことを国家的な問題として取り上げるのなら、なぜ、こちらも同様に扱わないのであろうか。こちらはつねに、個別事案の「貧しい人」という取り上げ方ばかりである。


 先日、いやなテレビ番組を見た。
 外国人労働者の工場派遣が減っている。他の国での待遇が向上してきたため、必ずしも日本で働く事を選ぶ外国人ばかりではなくなり、外国人労働者が集まらないという。
 そこで、近くのハローワークに来ている日本人求職者に聞いてみた。なぜ工場派遣労働の仕事をやらないのかと。マイクを向けられた日本人失業者の答えがこれであった。

   ・残業があるからいやだ
   ・工場だと同じ事の繰り返しでいやだ



 働くことは楽しいことである、自分の好きな事をやるべきである。こんな幻想に近い話を、あたかも当然の権利のごとく誤解させる風潮がはびこらしたものは、まともに働こうとしない自己中心の群れではないのか。もちろん稼ぐことだけを労働の目的とは言わない。だが、自分の好きな事だけやっていれば済むというのも、幻想に近いのだ。

 個人主義の名のもとに、この手の利己主義をはびこらせることで、誰が得をしたのであろうか。このような風潮をはびこらせることが、自分たちに都合がよいと考えた人達がいたことは確かであろう。が、ここでは原因追求が目的ではない。現状を、今一度確認しておきたいだけだ。


2011.03
秋山鷹志