烈風

文化を産業に育てる戦略を


 鳥取県は、「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげるの出身地でもあり、漫画に力を入れている。地方が特色を出すために、アニメや漫画からB級グルメまで、特徴をアピールすることに力を注いでいる。それ自体は大いにやるべきだと思うのだが、日本ではそこから先が貧弱なような気がしてならない。

 漫画を強調するのは、鳥取県への観光客増加を狙ってのことである。第一弾としては、それでよい。だが、それではしょせん、観光客誘致の呼び物で終わってしまう。そこから先、漫画にかかわる産業を興すところまでやってこそ、本当の地域振興ではないだろうか。

 一過性の観光客狙いに終わるから、国内客が来なくなったら、やれ韓国だ、中国人だと言い出す。それも多くの業者が集まって、たちまち過当競争が始まり、利益なき競合だけになる。原発事故などで、少し客足が落ちれば、たちまち倒産となる。残念ながら、日本中で、こういうことが繰り返されている。おまけに、文化を輸出する部分だけ、韓国や中国にまねされて、あたかも自国文化として世界に輸出されている。

 根本の原因は、相変わらず目先の利益を追求するばかりで、大きな国家戦略や個別の戦術というものがないところにある。珍しくアニメの好きな総理大臣が出てきて、アニメ振興を図ろうとしても、結局は、ハコモノを作るだけに化け、肝心のアニメ産業を育てる施策は皆無、さらに総理が変われば、たちまちすべてがどこかに消えてしまう。


 既得権や現状にすがる人間にとっては、何か新しいことをやられるのは、寧ろ邪魔なことなのである。したがって、リーダがよほど強いリーダーシップを発揮しない限り、今の日本では、新しいことはすべて掛け声倒れに終わってしまう。

 新しい時代の日本の産業として、大きな目玉になるのは間違いなく『日本文化』である。初音ミクはデビューしてすでに5年。しかし、ようやく世界に向けて売り出し始めたところ。正直もう遅いだろう。そのうちに同様の唄えるアニメキャラが登場して、マーケティング力で世界を席捲するかもしれない。そのとき、家電などの二の舞になったと示談だ踏んでも遅いのである。

 もちろん、「文化産業」とでも呼ぶべき物は、単にアニメや漫画にとどまらない。食文化でも、カップラーメンのように、企業努力で特定の国に進出しているものも出てきた。あらゆるものを産業として捕らえる新しい視点で、文化を見直し、関係する企業を育成する。国内では無料が当たり前のものでも、海外では有料化できるものもあるかもしれないのだ。

 安易な人まねではなく、もっと深く考え込んでいく姿勢が、日本全体に求められている。産業の衰退とは、所詮、人間の考える力の衰退に過ぎないのだ。新しい産業など、いくらでもある。それを産業としてとらえ、企業を育てる、人材を育てる、そういう総合的な戦略がかけているだけなのだ。本来、産業振興は官僚の得意な分野であったのに、今では見る影もない。成果への報酬を用意して、優秀な官僚たちに指示すれば、多くのアイデアも出てくると思うのだが。

2012.08
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