烈風

 ロシアの宇宙ビジネスと日本の産業


 世界でも有数であったソ連の宇宙ビジネス。それが、今では、失敗続きの状況である。  2010年10月の衛星打ち上げに失敗してから、ここ1年半で、軌道投入など打ち上げに失敗した衛星は、10基にものぼる。資源輸出型経済からの脱却を目指すロシアにとって、宇宙産業は重要な産業である。

 なぜ、ロシアの宇宙産業は、かくも衰退したのであろうか。いくつか理由が挙げられている。

 ・資金不足による投資の停滞

  多額の資金が必要な技術開発や研究の充実、関連設備の更新が、ソ連崩壊後の財政難で停滞した。 関連設備の約9割は20年間も使われ続け、老朽化が著しいといわれる。

 ・専門家不足

  90年代の人材流出で宇宙開発に携わる技術者層が減り、次世代の人材育成もできなかった。 宇宙庁で最も若い担当責任者も62歳という。


 これらの話、どこかで聞いたことがないだろうか。そう、まさにここ20年の日本経済の姿、そのものではないだろうか。
 バブル崩壊後、反省も改革もなく、ただ現状維持のために、国は国債という借金を重ね、経済界は非正規労働者という低賃金の使用、リストラなどによるコスト削減だけに走った。新しいことへの挑戦はおろか、新規開発や投資も、結局は過去の延長線上か、減じよう維持のためであり、真に新しい産業などまったく起こそうともしてこなかった。

 目先の利益確保のためにリストラした技術者が海外に流出して、結局、新興国の技術向上に協力するだけの、おろかな経営を繰り返してきた。また、即戦力の名の下に人材育成を放棄した経済界に対して、それに変わる人材教育などは、教育界も国もどこでも行われてこなかった。熟練技術者も高齢者しかおらず、いづれ国家の技術力が衰退するのも時間の問題と考えられる。


 何度も指摘してきた日本の製造業の高コスト体質、とりわけ開発に金がかかりすぎるのも、この技術力の低下、技術者不足が、影響しているのではないだろうか。
 初めての人のために書いておくならば。ここで取り上げているのは、家電などの普及品の新興国との比較を述べているわけではない。ロケットなどの宇宙産業、MRJなどに代表される航空機産業、スパコンなどのコンピュータ産業など最先端の欧米との比較を言っている。日本のスパコン京を抜いて1位になったアメリカIBM機の開発費は、京の10分の一だとご存知だろうか?

 ロシアでは、リーダーたちが危機感を持って対応を取り始めている。ロシアは2015年までに6500億ルーブル(約1・6兆円)の政府予算を拠出すると発表した。
 翻って、日本ではどうであろう。あまりにも、自己中心的な人間ばかりで、だれも、真に国全体や将来のことを考えているものがいない。国民もまた、そのような自己利益にかかわることしか、興味を示そうともしない。ここから改まらない限り、日本の真の再生はないのであろう。

 東日本大震災、福島原発事故、豪雨等たび重なる自然災害、周辺国の日本の領土への野望と活動などによって、ようやく日本人も眼が覚めてきたようである。単に安全保障の問題だけではなく、雇用や生活にも直結する経済の活動もまた、国民全体の意識がかかわっているのである。眼を覚まし、正しい判断をしよう。

20102.08.22
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