烈風

  正義より国益優先の国際政治の現実


 尖閣諸島の日本への返還前、米国のアイゼンハワー、ケネディ両大統領が、尖閣の主権の日本への帰属を明確に認めていたことを示す、米議会の公式報告書が明らかとなったというニュースがあった。当然であろう。

 だが、問題はそこにあるのではない。その後ニクソンが、いわゆる日本の頭ごなしで中国との交渉をおこなった。しかも、その後、アメリカは尖閣の主権について『中立』に変更してしまったのである。このとき、日本政府やマスコミはアメリカに抗議しなくてはならなかったのに、まったく行われなかった。自民党も今の民主党と変わらない。マスコミなど騒ぎもしなかった。

 アメリカの(世界の)正義とは、その国の国益に合致する時には持ち出されるが、国益に会わなければ平気で無視するものである。それが、世界政治や外国の世界である。この現実をみようともしないで、ひたすら神話を信じ続けてきた日本人も、さすがに目を覚ましつつあるようだが、自国を守るのは自国民だという当たり前の事を実践するときがきた。


 沖縄の米軍基地を減らすには、現実の問題として、それに変わる防衛力を日本が持たなくてはならない。いっぽう、現アジア情勢からみて、いますぐに日米安保を破棄するのは難しいであろう。としたならば、残された現実的な方策は、可能な限り沖縄の米軍基地を縮小させながら、それに変わる自衛力を高めることしか有るまい。その場合、必ずしも、米軍基地そのままが自衛隊基地になると言うことではない。敵地侵攻をしない自衛隊は、現米軍と同じ戦力や部隊を沖縄に保持する必要は無いはずである。むろん、そのためにも、今のがんじがらめに自衛隊を縛っている愚かな法律などを改正しなくてはならないが。

 防衛力向上の一つとして、ミサイル、無人機の開発を急ぐべきである。いわゆるミサイル防衛システムをいっているのではない。あれは、金がかかるばかりで、効果が薄い。アメリカの軍需産業向けに過ぎない。自衛隊の幹部もアメリカの顔色をうかがうばかりでなく、日本の防衛にもっとも効果的な方策とは何かを、真剣に考えて欲しいもので有る。尖閣に届くミサイルすらろくに持たない自衛隊が、本当に日本を守れるのか。国民も、自衛隊も全てが、もう一度真剣に考えるときである。

2012.10.08

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