烈風

新憲法の制定


 いまの日本のどうにもならない閉塞感とは、言い方を変えれば、もうこれまでの事を捨てて、新しい次の時代へと移りたいと願う思いに他ならない。
 聖徳太子の17条憲法、公家・武家諸法度、明治憲法、現在の昭和憲法......。その内容や作成過程に問題があるかどうかはさておいても、新しい時代には新しい基準(導く言葉)がどうしても必要となる。


 では、そもそも今の憲法の何が問題なのであろうか?単に占領下に、アメリカに押しつけられた憲法だから反対だというのではない。心情的にはこの理由だけでも十分なのだが、押しつけられた憲法であろうとも、時代に合って正しく機能しているのであればそれほど大きな問題は無い。だが、現実は異なる。ある意味では、押しつけられたことよりも、もっと深刻な問題がそこにはある。


 この憲法が、経済的な繁栄をもたらす事に少なからず貢献した部分があるという意見は、素直に認めておこう。だが同時に、行きすぎた個人主義がもたらした身勝手なエゴイズムの蔓延、母親が実の子供を殺すような心の荒廃、そして何よりも戦後唯一の利点で有った経済的繁栄ですら、この20年間はまったくなく、それどころか大変な借金と格差社会、多くの貧困者を生み出してしまった。それがいまの現実である。

 それらの出来事に目をつぶり、護憲とか改憲反対などと声高に言う多くの日本人は、いまだ占領下の反日教育の残滓に自らとらわれていることになる。それだけではなく、自分たちの現状の立場や既得権を守りたいがゆえに、新しい時代が来ることを心のどこかで拒否しているのである。新しい時代が来たとき、自分が今と同じ地位、利益を確保出来ているかどうか保証は全く無い。結局、言葉とは裏腹に、国や国民全体の利益ではなく、おのれ個人の利益を優先させていることになる。


 では、そもそも憲法とは何であろうか。
 そのまえに、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」には、成典化された憲法が無いのをご存じであろうか。さらにそのまえに、この長い国名、どこ。そう、通称イギリス、英国の事である。外国人は、UKとかブリテッシュキングダムと呼称する事も多いのだが。

 国名はさておき、イギリスでは、昔の大憲章やら判例法、慣習法などが集まって憲法に相当する法規になっているわけです。したがって、普通の法律同様に議会において簡単に変えられる。長い間、論議することすら許されなかった日本の現状とは、あまりにかけ離れている。民主主義のお手本の国の現実を、日本人はもっと知るべきあろう。

 そもそも憲法なるものが生まれたのは、支配者たる王の統治に対して、民衆が自由を求めてほう起し、その流した血と引き換えに、獲得したものである。つまり、憲法は本来は、王、政府、統治者などに守らせるべきものである。国の最高法規で、基本的には国民ではなく国家機関を直接の対象とする法規範である(憲法の対国家性)と言われるのはこのためである。

 エリザベス女王が、「君臨すれども統治せず」と宣言したのもこの故である。統治しないから王でいさせてよね、ということになる。国民は憲法によって国家(統治者)を縛り、国家は法によって国民を縛る、これがもともとの形ともいえる。


 真の民主主義とは、国民自らが統治する国であり、大統領のような強権を持つ統治者がいては成らないのである。それを、ややもすると日本人は、直接国民が選んだアメリカ大統領こそ民主主義の手本だと勘違いしてしまう事がある。
 アメリカ憲法には、大統領に宣誓させる条項があるのも、このためであろう。その宣誓は、キリスト教の神に向かってなされる。オバマ大統領が、宣誓の言葉の一部を間違えたということで、やり直すかどうか大きな問題になった。実際、宣誓式をやり直したそうである。それほど、重要な意味を持つ。
 政教分離の意味を履き違えている日本のマスコミなどは、神への誓いという事が自分たちの主張と違っていて、都合が悪いので、およそこの事実も、宣誓シーンもほとんど報道しない。


 すこし、前置きの解説が長くなった。、現憲法の問題点をかいつまんで列挙してみる。

 憲法の全体の問題点
  −理想と現実の混同
  −時代遅れ
    ・現状に合致していない
    ・新しい概念が含まれていない
  −歴史や文化の軽視。歴史的な視点の欠落
  −特定の主義や思想の過剰な押し付け。公平さにかける
  −権利が強調されすぎ、権利は不断の努力により獲得するとの民主主義概念が欠落
  −義務がなされて初めて権利があることを、ごまかしている
  −元首、国歌、国旗など、他国の憲法では当然のものが抜け落ちている
  −改正が非常に困難な規定
  −日本語がおかしい
    ・文法上
    ・助詞の使い方
    ・主語不明
    ・翻訳(直訳)文章のまま
    ・美しくない
  −内容の重複
  −内容記述にかたより
    ・ある事柄にはくわしいのに、ほかの事柄は触れてなかったり
  −用語の不統一
    ・例:内閣、国会、司法
  −定義があいまいな部分がある

 詳細は、個別条文で述べるとして、これだけの問題があるにもかかわらず、それを正そうと しないのは、まさに民主主義の否定に他ならない。悪政を働く王と同じではないか。

2012.06
秋山鷹志