烈風

情報省の新設


 新しい社会を作るには、当然、行政改革も行われなくてはならない。そのひとつとして、情報省を新設するべきだと考えている。

 日本が、「情報」を軽んじ、情報への対応が疎い国などという、ありがたくない説が定着している。情報に関する怠慢さをごまかすために、日本は情報活用が苦手だと他人事のように言い出す輩まででる始末。太平洋戦争においても、情報戦争に負けたというのが、お決まりの常套句となっている。このことの真偽はさておき、現在の日本社会が情報について正しく認識し、うまく活用できていないというのは事実であろう。

 歴史的に見たとき、歴史上に名を残す大方の人物は、いつの時代であっても情報の重要性を認識し、それを使いこなしていた。だが、日本人の大方を占める集団農耕型気質の人たちは、得てして情報に疎く、軽視しがちな傾向にある。それを少しでも正していくには、教育の力ももちろんであるが、情報省という新しい省を作ることも、国民の認識に寄与することになろう。

 「情報」という言葉、わかったようなわからないような、最近では「インテリジェンス」なる言葉も盛んに使われている。その手の本では、情報とは加工されていないいわば生のものであると書かれていることもあるが、それは誤りである。IT(情報通信)の世界では、40年以上も前から「生データ(ローデータ)」と「情報(インフォメーション)」として別に扱われてきている。
 カタカナばかり使用するのは、今の日本人が明治期の日本人よりも日本語力が落ちているからとも思えるので、インテリジェンスなどといわずに、智情報とでもしておこう。

 生データとは、まさに何も加工されていないままのデータの類である。情報とは、その生データをある目的や方法によって、加工した結果出てきたデータである。智情報とは、様々な情報やデータが氾濫する社会において、ある政策的な目的を遂行するために、加工、判断が加えられた情報である。
 わかりやすい例を挙げれば、衛星が捕らえた各種気象データそのままのものが生データである。それが加工されて、特定地域の天気図や天気予報などの情報になる。さらに、政策担当者が、明日晴れていれば出かけるが、どこに出かけられるのかと聞かれたとき、その答えが智情報(インテリジェンス)になる。つまり、明確な目的のもと、それに答えるための判断が加わっている情報ということになる。むろん、すべての智情報に判断が加えられているという意味ではないが。詳細は関連書書でも読んでいただこう。



 こんな言葉の定義はさておき、情報省の目的と具体的な内容について話を進めよう。

 情報省というと、直ちにスパイの育成かと短絡的な反応が起こりそうである。一方、東日本大震災を経験した日本人は、情報の重要性をいやというほど認識したはずなである。津波などの情報の伝達に問題があったこと、原発事故でも正しい情報が伝えられなかったばかりに放射能を浴びてしまった住民がいること、被災者を救援しようにもその状況を正しく把握できなかった情報不足など、多くのことを学んだ。情報とは、決してスパイの話だけではなく、国民のよりよい生活や安全、社会の仕組みに密接にかかわるものなのである。

 情報省の目的は、簡単にまとめれば次のようなことになる。

 ・国民にとって有益な情報が、正確かつ的確に伝播されるように、社会の仕組みや法律   の整備等を行う。  ・あらゆる分野における各種情報の整理・運用・監督が、適切に行われるよう支援する。  ・情報、智情報で不足している現状を補い、充実を図る。
 これらの目的のために、様々な活動が行われるが、大きなものとして次の各項がある。    −国営放送局の運営。    −国民の情報への入り口、情報110番とも言える115番の開設。    −各種情報システムの開発と運用。    −特許庁。    −国土地理院。    −GPS等情報衛星の開発と運用。    −智情報室の開設。    −情報社会における各種システムの管理。    −関連法規の整備。

 これら以外にも、公安委員会などインテリジェンスにかかわる既存組織も移すかどうかは、今後検討の余地があるだろう。しかし、とにかく、今不十分な体制を整備しなくてはならない。

 もう少し機能別にみると、次のようになる。
 情報収集の分野    −世界の情報の収集機能。いわゆるスパイのような活動ではなく、インテリジェン     スの情報収集を行う。    −必要な情報を入手する権限を有する。福島不第一原発事故がらみで、東電をはじ     めとする各電力会社の情報開示が不十分との声がおおきくなった。このような     場合、たとえば発表数値の根拠となるデータの開示などを命ずることができる     ようにする。無論必要なら、秘密開示でも。この歯止めとしては、別委員会と     異議申し立ての仕組みも必要になってこよう。    ー日本に対するゆがんだ対日教育、政策、情報操作を行っている国や組織などの     国家安全保障にかかわる情報も収集し、関係機関に対応を促す権限を有する。    −GPS衛星の開発、管理、運用。    −国内の各種情報のインデックスを収集し、DB化する。
 情報保護の分野    −個人、産業、国家の各分野の情報の保護にかかわる政策の遂行。    −企業、行政、政府などの情報保護にかかわる組織・システムの監査機能。    −海外での日本技術保護の支援(特許取得等)と日本の技術情報の保護。
 情報防諜の分野    −必要な各種情報の防衛をするために必要な処置をとる。    −海外、国内あらゆる種類の情報操作が、日本への悪影響を与えることがないよう     に監視・対応する。    −サイバー攻撃、電波妨害等の攻撃からの防御。
 情報活用(開示とサービス提供)の分野    −適切な情報開示がなされているかの監督機能    −政府専用チャンネル(国営放送)の運用。    −115番運用。    −セキュリティ・システムの研究・開発と産業の育成。    −政府・地方自治体用セキュアネットワークの構築・運用。    −政府保持のスーパーコンピュータの管理・運用    −各種システムの開発・保守       ・国民番号システム       ・国民番号付随口座システム       ・戸籍・住民基本台帳システム    −各種データを使った新しい産業の育成       ・個人健康・カルテDB。       ・各種センサーDB等。    −対外情報発信。
 調整機能の分野    とかく情報収集の各組織間はうまくいかないことが多い。外務省、防衛省、    内閣調査室、警察庁などの情報機関間の調整機能を果たす。

 この情報省、相当に広範な分野を対象領域としており、新しい社会においては、情報大臣は総理大臣への登竜門となるかもしれない。それほど、政府にとっても意味のある省である。

2012.06
秋山鷹志