烈風

情報省の役割


 今回の東日本大震災。この国家の非常事態においても、情報収集/分析のなさは国家としての体(てい)を成していない。これでは、国民の安全もあったものではない。少しでも改善していかなくてはならない。情報省の概要を「情報省の新設」で述べたが、内容をもう少し詳しく見ていこう。
 スパイ天国などという言葉がつかわれるだけでも、防衛上問題であるのだが、ことは防衛だけではない。科学技術など産業にかかわる情報や、個人情報など守るべき情報は多岐に渡る。一方で個人情報保護法の制定により、これまでのコミュニテイすら破壊するような極端な事例が数多く出てきている。社会を良くする法律が、社会の円滑な成立を妨げるとしたら、それはやはり法律に問題があるのだろう。とかく、大方の日本人は極端から極端に走りやすい傾向がある。昨今の責任回避の風潮がこれをさらに助長してしまっている。調和の取れた法整備が求められる。

 情報の防諜に関する法律が未整備なために、アメリカはむろん、アジアの国々とも情報交換が制限されている現実を、国民はどれほど知っているのであろうか。日本だけ蚊帳の外状態にあるため、さらに情報の価値を低く見る傾向に拍車がかかってしまう悪循環。きちんとした体系的な法整備は、喫緊の課題である。

 また、東日本大震災と続く原発事故に関わる政府の様々な会議で、議事録がまったくと言って良いほど取られていなかった。法的には問題ないなどと言っているが、明らかに情報隠蔽と責任回避に利用されたとしか考えられない。国民の知る権利が守られているか監視し、政府の情報統制も監督する役割を担うのが情報省になる。

 このような政治家などの情報隠蔽や責任回避を許さないためにも、きちんとした国家運営に関わる情報管理の法律を早急に整備すべきである。この一事でも、日本は世界から奇異の眼で見られている。
 東日本大震災以降、災害多発時期に入ってしまった日本での防災情報の重要性は、増すばかりである。正確で的確な情報をいかに早く国民に知らせるかは、政府の重要な役割である。
 NHKを公共放送といいながら、視聴料を払わなければ、災害時の情報もみれないというのは、明らかにおかしい。新しい国営放送は、もうひとつ新たに作る防災省と密に連携して、国民に緊急時の情報を適切に伝える役割を果さなくてはならない。そのために、国営放送局は、無料で視聴できるようにする。

 各家庭には受信端末をおいて、国営放送の番組をはじめ、様々な情報を受信できるようにする。詳細は、別に譲る。

 この国営放送の役割は、緊急情報のほかにも、社会で問題となっている様々な情報通知を少しでも改善する役割を果す。たとえば、水俣病の未認定患者の救済申請の期限がせまり、患者側と政府との間で問題となっている。ほかにも、人命にかかわるようなリコール情報など、常に情報を国民に流し続ける手段が重要になる。

 国営放送というと、政府のプロパガンダ(都合の良い情報を流すことによる情報洗脳)が問題になる。真に機能する第三者委員会などを設けて、内容を吟味する必要はあるだろう。だが、それでも、特定の思想や信条に流されたままの放送を続けるいまのテレビをみるにつけ、存在意義は大きなものがある。

 非常事態宣言時や大規模災害時に使用できる、通信のチャンネルを別に確保しておくべきだろう。その意味でも、今の総務省が持つ権限を情報省に移すかどうかも、検討されねばならない。
 警察の110番。消防は119番。だが、それぞれ、その前段階としての相談を受け付ける番号をご存知だろうか。警察が、全国#9110。東京都の消防庁救急相談センターは#7119である。ほかにも、世の中には様々な悩みなどの相談先があるのだが、その連絡先を知っている人はほとんどいない。何かあったときだげ、「○○110番」などと報道されるが、そのときだけである。実際、各警察署の相談窓口だけでも10もある。これでは、どこに連絡すれば良いのかなど覚えようがない。

 そこで、新しい窓口を作る。ここでは、相談そのものを受け付けるのではなく、相談窓口の連絡先を教えるだけにする。そうすることで、110番同様、何かあったらここにかけて聞くことができるようになる。実際の業務は民間に委託するにしても、基となる正確な情報は、公的機関が集めるべきであろう。インターネットでの情報公開と異なり、生身の人間による対応は、また違った意味を持つだろうし。

 この115番の受付担当者は、相当な情報検索技能とコミュニケーション力が必要である。そんな人材を育てるのも、情報省の仕事になる。

 国民が困ったときに、国が手を差し伸べようとしてくれている。それが感じられるだけでも、社会は明るくなる。
 国民番号などのような大規模システムの構築が、今後の社会の大きな課題となる。住民基本カードのシステムのように、維持費だけで140億もの予算が使われたり、個々の地方自治体がそれぞれのシステムを構築するような無駄なことはやめさせなければならない。そのためにも、既得権者だけのITゼネコンと揶揄される体制は、改善されなくてはならない。

 インターネットに変わる、量子暗号化されたセキュアネットなどの開発についての支援なども必要なのかもしれない。また、国内何箇所かに分散させた、大規模なシステムセンターが必要かも知れない。

 具体的には、次のようなシステムが想定される。(一部はすでにあるが改善の余地有り)
  ・国民番号と個人認証
  ・防災情報DB(防災省と共同)
  ・世界各国の情報DB
  ・住民票、戸籍
  ・国土地理院の持つ地図情報
  ・国民DNA、国民カルテ&健康情報
  ・個人生体情報(臍帯血(さいたいけつ)、乳歯等)
  ・古文書等文献DB
  ・センサー情報
  ・画像解析
  ・3次元GPS
  ・文化財DB
  ・宇宙地図
  ・資源DB.....etc
 知的財産に対する国の戦略は有効に機能しているとは言えない状況にある。日本の技術を守り、産業として経済的発展をなさしめる原動力のひとつでもある、技術情報を総合的に見ていく必要がある。海外特許などの状況もよく監視しておく必要がある。中国や韓国で日本の商品の標章登録がなされてしまって、問題となっている。事前に対応をすることが重要になる。

 新日鉄の極秘技術の情報が韓国に盗まれ、さらにそこから中国に漏洩したとの報道があった。これでは、新しい技術を開発しても、まったく無駄になってしまう。情報管理を甘くみてきたつけが、今回っている。
 地図は、防衛上非常に重要な情報である。いっぽう、防災などでも必要不可欠な情報でもある。そのバランスを取りながら、必要な部署に必要な情報を提供するのも情報省の仕事になる。

 すぐに活用できるデータベース化をはかりながら、その適切な管理、すなわち第三国に悪用されないような歯止めをかけることが重要である。
 宇宙は、サイバー空間とともに、新しい情報収集の重要な場所である。防衛省などとも連携しながら、産業振興の側面と合わせて、宇宙での情報収集や防諜の仕組みを整えるのは情報省の役目でもある。
 福島原発事故時、政府と東電の情報隠蔽もあり、海外のメディアは、それぞれ勝手な報道を行った。その内容は捏造や悪意に満ちたものも多く見受けられた。ネットでは問題化していたのだが、日本のメディアも政府も問題視すらしなかった。そんな中、アメリカCNNですら余りに悪意に満ちたうそ報道を行ったことに対して、在日30年のカール・ダニエル氏が、インターネットで反論のビデオを流し続けてくれた。彼によらず、欧米人でもキーン氏のようにわざわざ日本に帰化したり、ガガさんのように来日してくれる外国人も見受けられたのは、日本文化のなせる賜物であろう。

 それはさておき、このような海外の誤った情報、とりわけ大手マスコミの報道については、きちんと反論し訂正をさせなくてはならない。これを行うのは情報省の大事な役割となる。外務省や内閣官房が、適切な処置をとるよう強力に勧告する権限も与えておくべきであろう。

 ここで述べたのは智情報の持つ機能としての、公開情報の収集と情報開示活動にかかわる例として、取り上げてみたにすぎない。インテリジェンスとの関係は、詳細に検討されるべき課題であろう。特に、既存のインテリジェンス・コミュニティとの関係の明確化が必要になる。

 そのためにも、情報省に智情報室をおくことが望ましい。
 これらの様々な機能を円滑に運用していくには、人材が重要な鍵となる。情報処理やコンピュータ活用、情報マネジメント、サイバーセキュリテイなど情報にかかわる様々な分野の専門家を育成することは、政府の重要な課題になる。文部省にだけ任せるのではなく、積極的に人材の育成を進めるべきであろう。サイバー大学なども考えられよう。

 東日本大震災においても、津波でどこがやられ、どこに避難しているのかとか、原発事故で緊急避難するときに、どこにどれだけの人がいて、どこからどこに動かすのかといった基になるデータがまるで整備されていなかった。ましてや、機械化などまったく成されていない。今後IT技術の分かる人材が地方自治体にもいないと身動きできなくなるであろう。



 人材と並んで重要なのが、現実社会で使用されている情報システムなどのチェック機能である。たとえば、個人情報などの収集方法、管理方法、対応するシステムを適宜チェックする権限を持たせる。権限を持つことと、個別の実務を執り行うことは別の話と考えるべきであろう。問題がはっかくしたときに、それを是正させられれば良いのだ。発見は、民間に任せよう。これも別に述べる。

 開示すべき情報を適切な時期に開示しなかった企業、団体、政府、行政機関の責任、担当者は処罰対象とするべきで、情報開示と情報保護のバランスをとるためにも、一元的に管理する情報省が必要になる。



 また、サイバー空間の監視も重要であろう。ネット上に氾濫する有害もしくは誤った情報から国民を守るために、後方支援を行う。
  −ブラックリストの作成
  −注意情報の発信
  −正しい情報へのアクセスのインデックスを提供
  −ネット・セキュリテイの啓蒙活動


 さらには、放送、情報処理関係、通信、サイバー、暗号関係の企業をまとめる。これまでのような特定省庁の独占管理から、複数省庁の管理体制に変えていくお手本となるべき。


 ここでは、機能別の詳細解説はしなかったが、このように情報省のはたすべき役割は多岐にわたり、かつ、保護と開示のように矛盾するものを含んでいる。調和のとれた、まさに公の仕事がもとめられる。

2012.06
秋山鷹志