烈風

防災省の新設


 日本はその地政学的条件などから、自然災害の多い国のひとつである。とくに、東日本大震災以降は、地震の活発な時期に入り、地震・噴火などの発生の危険性が高まっている。ほかにも、異常気象といわれるような世界的な天候不順が、豪雨、竜巻など、これまでにはない多くの災害をもたらしている。

 そのような現状において、政治の対応はあまりにもいい加減である。そもそも防災担当大臣は無任所で、いわば大臣いすのひとつになっている。1年に何人も交代していて、本当に防災などできているのだろうか。しかも、このときとばかりに、復興庁の担当大臣まで置いている。

 いかに今の日本では大臣など単なるお飾りとはいえ、度が過ぎるのではないだろうか。政治改革の話はさておき、これから多くの災害が発生すると予想されるのなら、きちんと防災省を作るべきである。

防災省の役割


 防災省の役割とは言うまでもない、様々な災害から国民を守ることを目的とした省である。そのために、事前の情報収集や国民への教育、情報伝達からはじまって、発生した災害のいち早い把握と対応、さらに災害後の復旧や復興を担当することになる。

 災害の事前対応
  ・情報収集、予想、警報の発令、避難誘導等
 災害発生時の対応
  ・住民被害の把握、救出、避難誘導、警報発令、災害予測等
 災害発生後の対応
  ・避難者の保護、復旧、復興支援等

 傘下に、気象庁と復興庁を置く。消防庁や海上保安庁もここに置くか、検討すべきであろう。

情報省との緊密な連携


 地震予測といえば、気象庁となっていたが。東日本大震災においては、GPS観測によって、地殻変動の動きを捕まえることで巨大地震の大きさをすばやく推測できるシステムが国土地理院により開発された。こういう、新しいシステムで災害にかかわるものを、縦割り行政ではなく、担当組織と連携して活用することが求められる。

 気象庁の警報等の情報は、NHKなどの放送局と地元自治体の防災無線などによってきたが、新しい国営放送や、J-Alertなどの非常事態通報システムも活用されなくてはならない。むしろ、こちらが主となるように情報省と分担して整備すべきである。

 地元の自治体や消防、警察、海上保安庁、自衛隊など関係する機関と連携して大極的な分析、判断、対応を行うのが防災省である。

防災大臣


 現在のような無任所ではなく、専任を配置する。しかも、その大臣は、政治状況に翻弄されないように、政党とは無関係な人物とし、最低でも5年は続けられるようにする。つまり、政治家なら政党を離脱させるのである。あるいは、一般から専門家を任命しても良いだろう。だが、とにかく、専門的なことをある程度理解していて、迅速な対応、判断が取れる人物が好ましい。飾りの大臣イスにしてはならない。

 また、二人の副大臣を置き、大臣と合わせて3人で、24時間365日いつでも対応ができる体制をとる。したがって原則として、3人は海外に出れないし、まとまって同じところに出向くことはしないようにする。常に誰かが、陣頭指揮を取れるようにする。無論、このことは総理大臣の権限を制限するものではない。災害発生時の現場の総責任者、それが防災大臣である。

 結果、他の大臣と異なり、国会に出ないようなことがあっても構わない。現場の最高指揮者として、常に自由に動けるようにしておくことが重要である。

防災政策の見直し


 個別の政策を論じるつもりはないが、政策面でも課題は多いだろう。いくつかの例を 示してみる。
 ・災害被災者数の公表方法をかえるべき。    現在の確定重視は、小さな災害の場合には良いが、大震災のような大きな災害時    には、周囲の対応準備のためにもいち早く推測値を公表すべきである。  ・現実を正しく伝える    死体やけが人がまったく出てこない画面ばかりを見ていると、起きていることの    深刻さが薄れ、何かアニメでも見ているように、現実感なく受け取ってしまう。    これは、その後の災害に対する人々の意識にも悪影響を与えてしまう。個人の尊    厳やプライバシーに配慮しながらも、現実の姿をきちんと放送すべきである。    2万人近くもの死者・不明者が出ているのに、画面からは死にかかわるシーンが    ほとんど出てこないなどというのは、もはや異常としか言いようがない。    実際、海外メディアがインターネットで公開したものを見ると、許容範囲のもの    も多い。いたずらにあおるような場面を放送する局ばかりではないのだ。現場の    人たちの大変さすら、すぐに忘れ去られてしまうのも、そこに受けての側の現実    感がないからである。国営放送局の存在意義はこういうところにもある。  ・災害発生時の情報収集能力の飛躍的向上    残念ながら、発生した災害の「いま」についての情報把握が、非常に劣っている。    何がおきているか、どこに住民が避難しているのか、それらをいち早くつかむ対    応は、情報省だけでは困難である。関係部門の協力が不可欠となる。    全天候でも飛べる無人機の開発、災害発生時の緊急連絡網(衛星通信)の整備な    ど、やるべきことはたくさんある。こういうシステム化にこそ民間の活力を導入    すべきである。        東日本大震災のような大きな災害時には、自衛隊による迅速な情報収集が行われ    なくてはならないのだが、在日米軍よりも劣っていた現実がある。今後も自衛隊    に災害出動を要求するのであれば、装備も訓練も含めてそれなりの対策が必要と    なる。防災省傘下の実働部隊との連携行動もどうするのか、課題である。 2012.06
秋山鷹志