烈風

成人になる教育−2


 では、どんな内容を大人になるための知識として用意すべきなのでしょうか?そのまえに、「ビデオ」による授業といってきましたが、その点についても触れておくことにします。
 動画は、教科書などよりも気軽に受けられるうえに、人に訴えかける力には大きなものがある、ということです。したがってビデオは、新たに作成する必要があるでしょう。それこそ文部省が予算を取って作成し、全国に配るべきです。

 きれいごとではなく、目をそむけたくなるような現実でも、それを包み隠さず正面から取り上げたビデオ。個人情報やプライバシーには配慮しながらも、できるだけ実写のビデを使い、画面上では、それが再現なのか実写なのかをきちんと表示するなど、きめの細かい配慮をしたビデオが基本です。
 特定の思想、信条を押し付けるのではなく、世界の現実を現実として受け止める為のビデオも、大人になるためには重要です。

 ビデオのあと、教師はこのビデオが何を言いたかったのかという点については、きちんと伝えることです。それも、長々と説明するのではなく、あくまでも1行ですむテーマを伝えること。その先は、生徒が自分で考えることなのです。それが大人になるということの一歩でしょう。インタネットでの検索用にキーワードを教えたり、関連する書籍を紹介するなどはよいかもしれませんが、教師は、生徒の質問に答える程度に終始すべきです。まちがっても、自分の考えを押し付けてはなりません。

 前置きがながくなりましたが、ではどんな内容をテーマに取り上げるべきでしょうか?大きくは、次のような事柄に関係する内容がよいと考えます。

  ・地球の現実の厳しさと不条理(貧困、格差、環境等)   ・人間がどれだけ恵まれた環境で生存しているのかと      自然への感謝(人間の思い上がり排除)   ・自然への畏敬の念(災害等の過酷な現実)   ・大人として知っておかなくてはならない最低の約束事とルールを守ること   ・権利は義務と一体であること。さらに不断の努力で獲得するべきものが権利。   ・生きるということ、生命とは、生と死   ・社会の成り立ち・現実の困難さへ立ち向かう心構え   ・国際社会の現実(理想で世界の政治や外交は動いていないこと)   ・自由と制約(自由は放任、自己中心、傲慢とは違うこと)   ・日本人の気質の特徴
 あまりつらいことばかりでも萎縮してしまうので、夢や知識もとりあげましょう。
  ・夢の実現と影の努力(夢は悪くないが、努力もせず夢におぼれないように)   ・便利知識とその入手方法

   上げているときりがないのですが、普段は見過ごしてしまうようなこと、商業社会ではあまり取り上げられないようなこと、結局は現実と理想の間の調和をどうはかるのかが問題だと気づかせることなどを、含めるべきでしょう。


 以下は、思いつくままランダムに掲げただけで、上記の項目と必ずしも一致しているわけで はありません。

 ☆ 人間の生存環境は自然の驚異によって成立している
    宇宙の生成時のほんのちょっとしたことが、今の宇宙を存在させている。地球の     位置、周囲の天体の位置などの偶然が今の地球環境を生み出している。大気が生     命の存在を守ってくれている現実。海と陸の存在。     さまざまな恩恵がなければ、人間をはじめとした生命の存在すらないのだという     現実を知ること。

 ☆ 職業に貴賎はない
    大企業とか公務員志向ばかりで、3kを嫌う風潮の奥にある職業差別意識。社会     は様々な職業の人がいてはじめて成立する。3kでなくす努力や技術進歩を図り     ながら選んだ職業に誇りを持って生きられる社会こそ豊かな社会だと気づかせる。

 ☆ 異文化の理解
    文化は、どんなに同じ言葉を言っても内容が異なるときがある。異なるものだと     いうことを理解しよう。同時にまた、文化のもとにある人間としての多くの共通     項、同じ点があることも事実。この矛盾そのものをきちんと理解しておかなくて     はならない。グローバル化などと表面的な言葉ではなく、その意味することを理     解しよう。虹が七色なのは日本だけ?国によって虹の色は異なることを示そう。     もうひとつの例として、たとえば、日本では太陽は、もっとも自然の恵みを象徴     する、とてもすばらしいものと考えるが、中東などの砂漠地帯では太陽は、人を     殺す悪魔のような存在でもある。こういう地域では、日本の太陽に相当するのは     月であるという事実など。

 ☆ ネーティブイングリッシュから世界英語へ
    ある他国民の会合で、アメリカ人が最後に聞いた。     「よくわからなかったのだけど、みんなは何語をはなしていたの?」     「共通語の英語に決まっているじゃないか」と、誰かが答えた。

    ある国へイギリスの本社から派遣された社員が、地元の社員たちと打ち合わせを     しながら仕事を進めていた。そこでは、いつも活発な英語による打ち合わせが行     われていた。あるとき地元社員の代表がやってきて、本社から来た社員に向かっ     てこう言いました。     「すみません。もう少し、みんながわかる英語をしゃべってもらえませんか?」

    もはや、英語は特定の国の言語というよりも、世界の共通語としての意味が大き     い。となると、必ずしも英語を母国語とする国の人たちだけの言語ではなくなっ     てくる。言語には必ず文化がついてくる。その文化の違いは大きいものがある。     世界共通語として人工的に作られたエスペラント語が普及しなかったのは、まさ     にこのためであろう。

    世界の人が英語を共通に使用することによって、世界の文化が同じようなものに     なっていくよりも、各地域の文化により使用される英語が変貌することのほうが     はるかに大きいことを知っておきたい。

 ☆ アメリカの公用語は何語?
    アメリカでいま英語を公用語として指定すべきだという議論が持ち上がっている     そうです。むろん、州によってはすでに決めているところもあるそうですが、ア     メリカ合衆国全体では、特に憲法にも規定されていません。     これまで、アメリカに移り住もうとした移民などの人々は、アメリカ人になるこ     とを望んでいたので、英語を必死で学びました。また、英語がうまくしゃべれな     いとアメリカ社会では上流階級や政治家にはなれませんでした。

    ある州の議員が英語をうまくしゃべれないので、議員として不適格であるという     裁判所の判断が下ったそうです。     実際、今アメリカに住む人々の実に2000万人以上の人が、英語をしゃべれな     いそうです。いわゆるスパニッシュ系移民の増大が、英語をしゃべれないアメリ     カ人を増加させているのです。世界はめまぐるしく動いていますね。


    日本でも、日本語を公用語とすべきでしょう。それは移民受け入れの準備などで     はなく、日本にも少数民族として認められた人々がいるからです。言うまでもな     いアイヌの人たちです。今ではほとんどアイヌ語を話せなくなってしまっていま     すが、いつかまたみんながアイヌの言葉を使うようになるかもしれません。
    日本語を日本の公用語にするという意味は、アイヌの人々がアイヌ語を使うこと     を認めることにほかなりません。これは単なる方言とは意味合いがことなります。     たとえ、方言同士の会話が成立できないほどに違っていようとも、方言は日本語     です。

    沖縄の人々はどうなのでしょうか?琉球語が日本語に属するといわれていること     でいえば、かなり特色のある方言のひとつでしょう。

    ここまで立ち入ってしまうと、とても成人になるための話の範囲を超えてしまい     ますね。日本以下は、止めておきましょう。

(続く)

秋山鷹志