烈風

防災省の役割:物資調達と物流


 災害や非常時における物資の調達、配送は非常に重要な事柄でありながら、迅速で効率的な対応はかなり困難なものでもある。非常時発生の段階に応じて、やらねばならない内容も異なり、関係する省庁、自治体なども多岐にわたる。日ごろの備えと非常時の緊急に必要になった物資とでは、これまた対応もまったく異なる。

 この物流、ロジステックなどと呼ばれて、企業にとっても重要な課題だとされるのだが、だいたい日本では問題のある事柄について新しいカタカタ言葉を使うことが多い。これも、まさにその典型的な例である。

 軍事的には兵站であり、日本軍の弱点としても有名であるが、日本企業は苦手だともいわれる。しかし、戦国武将で物資の搬送をうまく行なえない高名な武将はいない。ようは、リーダーたちの意識であろう。
 防災用物流での具体的な事項には、次のようなものがある。

 災害・非常事態発生前

   必要な物資選択
   備蓄場所の確保
   調達と備蓄
   備蓄品の管理と更新
   緊急調達方法の確保

 災害・非常事態発生時

   必要な物資の認識
   搬送先の認識
   搬送者、手段の確保
   搬送
   被災者への分配
   物資情報の更新
   緊急調達

 比較的小規模な災害であれば、備蓄品放出で間に合うかも知れないが、最近多くなっている大規模災害などでは、物流そのものがまったく機能しないこともよく起きる。そのなかで、最新の状況に応じた、適切勝つ迅速な対応は、自治体任せでは心もとない。かといって、すべて何でも自衛隊に丸投げするようでは、それもまた問題である。大規模あるいは高度な災害や非常事態においては、当然自衛隊の協力が不可欠となるが、警察、消防、自衛団、住民、NPO、自治体など、多岐にわたる関係者を総合的に運用する司令塔を、防災省が担うべきであろう。

 平時における備品などの状況も、一元管理なされていることが重要である。現在は、各自治体が隣の状況すらわからない状態にある。情報省とも連携して情報の収集管理などを積極的に進めておく必要がある。


 福島第一原発事故では、様々な問題点、課題が浮き彫りになったが、この物流もまた大きな問題として残ってしまった。原発が電源喪失状態に陥った際、様々な機器や部品などが必要になったにもかかわらず、必要なものが現場に速やかに届かなかったのである。

 非常事態時に、現場の要求を速やかに吸い上げる体制も、仕組みもなかった。通信手段すら限定されていた。加えて、集められた物品が、現場に届けられなかったのである。理由は、放射能汚染された場所への、配送にかかわる体制がまったくなかったのだ。危険だから行くの行かないのと、およそばかげたことが問題にもなった。国家の危機に、日本人も落ちたものである。

 アメリカでは、原発事故に備えて、州に化学防護隊が常設されている。ここのセンターで、必要なものを直ちに入手して、放射能防護服を着て現場に届けることになっている。軍隊ではない彼らが、「行くとか、行かないとかそんな話はない。全員直ちに出動する」とインタビューに答えていたのが印象的である。
 日本で問題となった電源車。30種類もの電源車が常時、用意されている。危機管理とはまさに、このように備えることであろう。日本ではいまだに、役に立たなかったオフサイトセンターという建物だけを、再度建築しようとしている。こんな関係者に怒りを覚えてしまう。

 このようなセンター機能を、自衛隊と分担しながら構築するのも、防災省の重要な役割になるのだろう。現場の人間が命をかけて作業に取り組もうとしているのに、必要な物がないなどとは、二度とあってはならないことなのである。

2012.07
秋山鷹志