私は武士だ.....かな?!


 ボストンのマラソン会場でのテロ。まったく人類は、本当に進歩の道を歩んでいるのであろうか?

 日本ではオーム真理教のテロぐらいで、海外のようにテロが頻発してはいない。だが、海外に出かける事が当たり前になった昨今、日本人も常に意識しておくべきであろう。今の日本人は、『危険』と言う事に対して、あまりにも鈍くなっている。教育の問題もあるが、それ以前に、生きる事への緊張感が欠けているのでは無いだろうか?


 私の初めての海外は、ヨーロッパだったのだが、ロンドンでは中央駅を出発したところで、爆発があったことを知らされた。スペインにいけば、警官が銃を構えて列車に乗り込んでくる。警察署長が殺害されたとか何とか。よく分からなかったが、ま、銃口を向けられるのは良い気分では無い。1ヶ月の放浪旅行中、何度も危ない目に合うところだったようである。

 それで癖になったのか、その後、出張で海外に出かけても、よくそんな場面に遭遇した。空港で、退避させられたことは何度もある。アメリカでは、宿泊先のモーテル(簡易ホテル)に、夜中パトカーが突っ込んできて、ライフルを持った警官が飛び出してくるし。火山噴火で足止めされたり、色々あった。
 なかでも、一番びっくりしたのは、2005年かな、例のロンドンでのテロ騒ぎである。まさにその時、市内にいた。訪問先でも、なぜか相手が話をしてくれないで追い出されるし、街中パトカーやらで騒然とする中、人々が走り回っていた。ようやく見たテレビ画面では、首相が深刻な顔をして何かわめいている。

 いま、まさにテロが起きているのだと分かったのは良いが、どうしようもない。タクシーなんて見当たらないし、どこに逃げれば良いのか検討もつかない。異常に興奮している自分がそこにいたのだが、一方で、異常に興奮しているなと、冷静に見ているもう一人の自分がいて、妙に落ち着いている。ま、死ぬも生きるも天の定め、武士は、常に死を覚悟しているのだと、そんな事を思うかっこいい自分がいた。

 「武士道とは死ぬことと見つけたり」という意味は、武士たるものは、常に死を意識して、覚悟を持っているという事で有る。なら、私も武士(さむらい)だったのだろうか!


 冷静に、安全そうな方向を見極めて歩き、1時間ほど歩いてようやくタクシーを捕まえ、ホテルの方面が無事だというので乗せてもらった。が、その晩は、恐ろしさと興奮で寝られなかった。武士も、後で怖くなるのだ。

 テロなど経験しないに超したことは無い、だが、危険は常にそこにあるという、緊張感を持って生きることは、今の日本人にもっとも欠けていることではないだろうか。武士の心構えを持って欲しい。それが己の為にもなる。

                               2013.04.17
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