On草子
紅菊



漂 う

  ひたひたと足音もたてず近づいてくる   灰色の闇が近づいてくる   世界がわたしに飲み込まれるように   せまってくる   突然 それはわたしを見失い   とまどい しかし泰然とそこにある   行き場を失った魂が ぼんやりと   虚空に浮かぶ そのように   白と黒の混在の闇に世界はとけこみ   迷い子の怨霊を身にまとい   永遠を告げることもなく   恐怖はどこにいってしまったのか   あのときめく不安はどこにいるのか   薄ぼんやりとした存在と虚無の空間に   時を見失った闇に    手をさしのべても   不可思議もなく 通り抜ける   過去もなく明日もない   だが せめて「いま」がほしい   時間はむなしさを忘れて   すぐそこにとどまっている   早くわたしを捕らえよ   永遠の闇と絶望の深淵にいざなえ   せめて慟哭の情をそそげ   乾きも餓えも無いこの身に   意識をはく離せよ 宇宙のはてに   ひとりぽっちのこの身をいざなえ   存在の意義もなく   漂うこの身を

秋山鷹志 On草子へ戻る 紅菊へ戻る

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