On草子
紅菊



都会の風

  鉄の建物(はやし)に吹きすさぶ風は   魂(こころ)を傷つける   時刻(とき)に駆り立てられ ささくれる心   慰めは 高くそびえる摩天楼   癒すものは まばゆい照明(あかり)のアーケード   ときめくものは 怪しげなルージュのなまめく輝き   汚れ 傷つき 疲れ果てた 心と身体を   忘れさせてくれる時間(とき)は すぐに去り行く   ふるさとの思い出さえもすでになく   ビルのなかには   流れる人工川(かわ)と化粧をしたコンクリの山   野獣がほえる 都会の片隅で   ふりしぼるうめき声が 路地裏にかすれゆく   人々はそれを風の音と聞く   平穏という名の かけがえのない幸せを   身体いっぱい受け止められる    そんな感性(こころ)も 失った   もろく崩れるガラスの夢さえ持たず   幸せだよと 伝える相手のある喜びさえも   忘れて果てる 都会の風に

                          2008.02
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