On草子
紅菊



越後雪化粧

   越後の山の奥深く 雪を枕に眠る人    もうすぐ春も来るだろう    ああ 狂おしいほどに美しい     寝顔は誰に会えたのか    唇に当てた人差し指は    分かれた時のあなたのしぐさ    雪よ 隠せ 思いの丈のすべてを    雪よ おおいつくせ 生命のかぎりを    見果てぬ夢と引きかえに    雪に抱かれて何を思った    ああ 狂おしいほどのせつなさ    たった一度の口付けさえも    たった一度の抱擁さえも    たったひとこと さよならさえも    雪よ 君をうづめて まだ降り止まぬ    君のおもいを 覆いつくして まだ降り止まぬ    越後の雪 しんしんと降り積もるだけ    越後の山の懐に 雪割草が咲くと言う    春まつ花に思いを託し    ああ 狂おしいほどに美しい    笑顔は誰を思うのか    唇にかすかに残る紅のあと    握ったままのあなたのしぐさ    雪よ 隠せ 思いの丈のすべてを    雪よ おおいつくせ 生命のかぎりを    見果てぬ夢と引きかえに    雪にうもれて何を祈った    ああ 狂おしいほどのくやしさ    たった一度の口づけさえも    たった一度の抱擁さえも    たったひとこと さよならさえも    雪よ 君をうづめて まだ降り止まぬ    思いの丈を 覆いつくして まだ降り止まぬ    越後の雪 しんしんと降り積もるだけ

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