オン草紙の和歌集

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ここは『和暖流』です
若竹 雨水 ヤマトタケル夢幻の道 和暖流 赤鳥居


ひとりだけの誕生日

雨うたれ 草をついばむ はぐれ鳥
      悲しく白き 翼広げん

雨にけぶる公園の小道。近くを通っても、飛んで逃げようともしない一羽の鳥。 エサを捜しているのだろうか、時々翼を広げたりしながら、あたりをついばんで いる。閉じた両の翼が背中で白い線を作っていた。白さが目に焼き付き心にしみる。 私と同じ、ひとりだけの誕生日(11月11日)なのだろうか?



リストラがわが身にも忍び寄る、いや、襲い掛かる

手のひらで 何を語るや しわの数
         見つめるだけの 我そこにあり

年輪というよりは家事などで冬の手は荒れるのだが、なぜか、自分の手ではないように見つめてしまった。それでいて、何も考えてはおらず、ただ黙って見つめるだけの自分が、そこにいることを感じていた。



節分、立春と春到来なのだが....

鬼が来て あまりに貧し 人々に
     涙を浮かべ 山に戻りし

鶯が 野山に告げる 春なれど
     不況の街に いつ鳴き来るや

立春の 暖かい風 ここちよく
     街吹く不況風(かぜ)は 心も凍え


せっかくの春を告げる季節だというのに、この不況風は年度末の3月に 向かって激しい北風になるばかり。 こんなときこそ、明るい歌を詠みたいのだが.......



成人の日に思うこと

遠い日に 高くかかげた 志(こころざし)
        果たせぬ今も もとめる心

夢があるわけではなかった。大望も捨てていた。それでもなお、捨てきれぬ思いが あった。高潔に、孤高に、潔く生きたいと願った幼き日。いまだ遠い道ではあるが、 せめて追い求める心だけは失いたくない。

華やかに 着飾る人を 遠く見る
       光と影なす 成人の群れ

すべての成人が、あでやかな晴れ姿で成人式を迎えたわけではあるまい。特に今年 は、不況の中。どこで、どのように迎えようとも、希望の明日を信じて生きてもらいたい と願わずにはいられない。


明けましておめでとうございます  元旦

初日
いままさに 再生の年 明けにける
        大和の心 うるわしき国

今年は日本にとって、大変ではあるが、新しく生まれ変わる良い機会なのかもしれない。 「麗しい国土と、豊かな心を取り戻すべく励めよ」と天の声が聞こえてくる。再生の始まりを信じよう。

おだやかに この世染め行く 初日かな
        人世の嘆き 一炊(いっすい)の夢

昇り来る初日が、徐々に周囲を明るく輝かせていく。空も、山も、そして人工の街並みも。
このおだやかで、荘厳な景色の前には、激動の世相といえど、一炊の夢に過ぎないのかもしれない。


年の瀬のあわただしさより、不況の報道ばかりが眼にうつる

募金箱 つり銭持つ手が ふと止まる
          不況の風が 心をむしばむ


神社、仏閣の祈祷や寄進などの寄付とはまったく別に、コンビニの募金箱や街頭 募金に一定額を寄付しようとしてきた。それが、明日はわが身と感じたとき、ふと いつものつり銭の募金への手が止まってしまった。情けないものだ。


窓揺らす 風のすごさに 眼をさまし
         野宿する身に 思いはせたる

風のすごさに眼を覚まし、路上生活者の寒さを思ってしまう。今の自分の境遇に ただ感謝、感謝。


ビルすら一服の背景と化す

朝霧の 覆い隠せし ビルの街
      清めて欲しい 人の心も

朝霧の流れる壮大なさまは形容に尽くしがたいものがある。人工の街並みなど 何の意味もなさない。三十階からの眺めは、遠く新宿の高層ビル群も、ただの 背景と化してしまう。


暦どおり寒い朝

立冬と 呼ばれて来たよと 丸笑顔
       北風小僧が 駆け回る朝

北風小僧のイメージといえば、丸刈りでくりくり目玉のぽっちゃり坊主。でも、もっと寒くなると、母親の雪女が出てきそう。


不況なんだよね。おもわず、こう詠みたくなる

千代田の森 木枯らし1号 吹きし朝
           民のかまどは 吹雪にかすみ



お伊勢参り

久しぶりにお伊勢参りをしてきました。3連休の初日ということで、案の定すごく込んでいました。
今回は外宮、内宮に続いて、倭姫宮を参拝してきました。初めてだと思っていたのですが、以前に一度だけ来た記憶がよみがえりました。外宮、内宮と異なり、参拝の人はほとんど見かけませんでした。この静謐さが神社の魅力のひとつ。


騒々しき 畏敬知らざる 人の群れ
           些少(ちいさき)ことと 神に笑わる


五十鈴川 写メ撮る人は 数あれど
           禊をなすは 我と女児(おさなご)


倭姫 いかにおわすか 知らねども
           我にも授けよ 破邪の剣


場所柄も 今宵ばかりは 主(あるじ)なる
           夜空に映える 月讀宮(つきよみのみや)



霜降へ

寒露(かんろ)から霜降(そうこう)へ、 秋の変化はめまぐるしい。





かるがると峯渡り行く雲に聞く
          山間(たに)の暮らしに 変わりなきかと


『あったかい』 飲みもの恋し ビルの中
              自販機さがす 残業の秋


雲と風 山を染めよと 腕競う
              月が見守る 霜降の秋


山野辺に月さえわたる秋の夜は
          露から霜へと移ろいのとき



2008年(平成20年)元旦

初日
天(そら)つきて昇る初日の勢いに 
    眺める冨士も 雲かきわける


白き峰マフラー代わりの雲はらい
    冨士も見とれる 昇る初日に




今年の初日の昇る勢いは、いつにもまして清冽な感じがした
西からそれを眺めていた冨士は、襟巻き代わりの雲を大急ぎで 脱いでいたように見える
陽が昇ったころには、冨士も雄大な全容を現していた



明け染める空より広き心もち 
      今年を過ごす夢をかなえん


        なかなか、元旦のすがすがしく、穢れのない心持を1年間
        通すことは難しい
        煩悩は、3日と言わず、1時間でくる



あけ放つ初日の光あまねくか 
      都市(ビル)も山並(やま)も 曙光(ひかり)たがわず


初日が白く染めていく風景は、人工物でも自然でも、その 違いを忘れさせてくれる


秋山鷹志

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