「走の章」
どいとくれ いくらなんでも 多すぎる
    ご主人様が 見つからない

もういやだ 昔はよかった この駅も
    人が少なく 待つのも楽で

 私は東京生まれなのに、この忠犬ハチ公の銅像が、渋谷駅のどこにあるのか、実は、長いこと知らなかったのです。待ち合わせでは、交番の前とか、お店とか、意外にハチ公は使いませんでした。

 

 それにしても、いつの世も人間とは勝手なものです。はじめハチ公は、駅で結構いじめられて、いわば虐待されていたそうです。それが、大手の新聞に『忠犬』として取り上げられた途端、周囲の扱いが変わったそうです。そんな人間の身勝手を知っていればこそ、なおさら、わずか1年足らずで会えなくなった(急死した)ご主人が恋しかったのかもしれません。

 蛇足ですが、ハチ公のご主人は、東京帝国大学農学部教授、上野英三郎という著名な学者です。ウィキペディアには、様々なエピソードと、忠犬ではなかったという説への反論なども載っています。やっぱり、忠犬ハチ公であってほしいですよね。