会社などすぐ倒産

人生は迷路かな③ 会社などすぐ倒産する 転職人生の始まり

 初回に自分の就職時の話をしたが、不況が続くと就職活動が何かと話題になる。いまだに、本人はもちろん、母親など親の大企業指向も、相当に強いものがあるとか。だが、大企業なら安泰などというのは夢物語だと、いい加減気づいて欲しいもので有る。で、公務員に向かうわけであるが、教員など『教える技術や能力』が充分でない公務員は、勘弁願いたいもので有る。

 私が最初に就職した会社は、いわゆる大手企業の子会社だった。入社当時から問題があると思っていたので、停年までいるつもりは初めからなかった。わずか1年少しで、上司に辞める話をしたところ、同じ親会社が面白い通信関係の企業をたちあげる、自分も行くから一緒に来ないかと誘われて、移ることにした。新しい会社が出来るまでの半年は、親会社への出向の形を取っていたが、実質、初めての転職であった。

 何はともあれ、そこでは、部長以上は全て親会社から天下ってくるのが分かっていたので、同僚と良くこんな話をしていた。「ま、出世はないけど、停年まではいられるだろうから、そこそこやっていこうや」と。
 これが、我が転職人生の始まりであったのだが、神ならぬ身の知るよしもない。(なんか、小説っぽいな。)この物語は、まあ、ぼちぼち話をしていく事にしよう。


 話を、初回に書いた就職時に戻そう。(このあたり、すでに迷路だな)
 寝違えて頭の一部が良く働いたおかげかどうか、筆記試験を通って面接と成った。当時急成長中でそれなりの規模の会社だったと思うが、面接の最後は社長まで出てきた。たしか公認会計士から会社を興した、やり手だった。
 その社長が、面接でしつこく私に言ってきた。「君は営業に向いている、営業をやらないか」。SE(システムエンジニア)希望だった私は、営業はイヤだとだだをこねた。自分の事は自分が一番よく知っている、と思っていた私である。自分が営業職向きでないことは、誰よりもよく知っていた。今でもこれは正しいと思っている。それはさておき、なにをどう気に入られたのか、帰宅したらすでに合格電報が来ていた。
 
 営業なんかにされたらたまらないので、すぐに辞退の連絡を入れてしまった。当時は成長力のある会社は、余裕があったのであろうか。もちろんバブルよりはるか以前の話である。断っているのに、年に一度の会社の慰労会があるからそこに来てみませんか、としつこく誘われた。京都のホテルでやると言うので、遊びにいくことにした。むろん新幹線代もホテル代も、会社負担であった。どんなものか興味を持って参加してみたのだが、ほとんど記憶にはない。(ぼけたか?)
 その後、社会人になってからこの手の会社主催パーティは、イヤと言うほど経験した。その多さ、つまらなさに、まとめて記憶から消してしまったのかもしれない。


 この会社を辞退したのには、実は他にも大きな理由があったのだ。面接の後、帰るときに出口の所で、ガードマンに通行を遮られたのである。「ちょっと待て」と言って通してくれない。何事かと思ったら、そこに地下の駐車場から黒塗りの車が上がってきた。どうも社長か何かが乗っていたらしい。

 これをみて、もし私がこの会社のお客さんだったらどうするのだ、客より自社のお偉いさんを優先させるのか、と怒りがこみ上げてきたのである。こんな会社は必ずダメになる。そう予言いや予測を心の中でしていた。この予言(いや予測だって)はその後見事に当たった。10年しないうちに、会社は行き詰まって倒産した。ま、コンピュータ関連会社の浮き沈みは,当時から激しかったのだが。


 人生において先の事など誰もわからないのだから、初めから安定とか、楽な仕事とか、勝手に前提をおいて考えない方が良いと思う。かって、石炭業界は大変な優良業界で、東大など一流校から卒業生が押しかけた。しかし、あっという間にこの業界はなくなってしまった。これなど、わかりやすい例であろう。


 この会社の社長とはまったく逆の、ある社長の笑い話を聞いたことがあるので、最後に付け加えておこう。

 日本で知らない人がいない、超有名企業の話である。社長が重役専用エレベータを待っていたところ、若い人間が一緒に乗ってきた。社長は、常日頃からお客様第一と考えて実践している。この時もお客様だとおもって、自分よりも相手を優先してエレベータの乗降をさせた。偉い!
 でも、この手の話には必ずオチがある。
 あとで、乗り合わせた部下が、どうして自社の社員に道を譲ったのか聞いてみた。「なに、社員!バッジをしていないから、てっきりお客様だと思った。すぐに探しだして処罰しろ」と怒ったとか。

 従業員が十万人以上いては、社員かどうかなど分かるはずもない。まして、社長が乗る専用エレベータに乗ってくる不届きな社員がいようなどとは。おまけに絶対必須の社員証までつけていない。いったい社員教育はどうなっているんだ、社長!
 お後がよろしいようで。この話、事実かどうかは知りませんから。

平成25年(2013年)2月1日

 

2013年02月01日|コラム・エッセーのカテゴリー:人生は迷路かな