PSYCHOLOGY & BRAIN SCIENCE 06

人はもともと利他的だったのに、なぜ利己的になったのか?

利他性と利己性が生まれる背景を、人類と脳から考えます。

 最近では利他的と言う言葉すらよく知らない人が増えたような気がします。特に政治家には。
 もっとも、対語の「利己的」すらわかっていない人も多いようですから、無理もないかもしれませんね。

 個人主義万能の風潮がいきすぎて、わがまま、自分勝手な利己主義画蔓延する社会になっている事は、少なくともまともな人には抑えておいてほしいものですが。言うまでも無く、「利他主義」はそれとは逆に、自分の事よりも社会全体や国の事を考える思考形態のことですね。日本人の二つの気質型の比較表でも取り上げています。

 ですが、利他主義的な考え方は、むしろ人類が動物であった時代からの考え方なのだと知っていますか?
 昔から人間は、ひとりでは生きていけない存在でした。体は弱く、牙も爪もない。だからこそ、仲間と協力し、助け合うことで生き延びてきました。お互いに食べ物を分け合い、危険を知らせ合い、子どもを守り育てる。そんな「利他の心」が、人間らしさの根っこにあったのです。まだ、人間らしい高度な文化も持たない、「動物」時代の人類の話です。

 五万年くらい前から人類は文化を獲得すると共に、知能も急速に発達していきました。動物から、より人間らしくなったわけです。さらに進んで、現代になると、社会の仕組みが大きく変わりました。
 個人の自由が尊重され、競争が激しくなり、情報もお金も「自分のもの」として管理されるようになりました。 その結果、「自分の利益を守ること」が優先されるようになり、助け合いよりも損得が重視される場面が増えてきたのです。



 これは、脳の働きにも関係しています。
 人の脳には「共感」や「思いやり」を感じる部分と、「損得」や「計算」をする部分があります。脳の古い皮質に、利他的な働きをする部位があり、新しい皮質の部分に利己的な働きをする部位があるのです。
 昔は共感のほうがよく使われていましたが、今では合理的な判断や自己防衛のために、計算の脳が優位になることが多くなっています。つまり、利他的よりも利己的になったのは、最近のことなのです。これは意外だと思われるかもしれませんね。

 脳科学で言えば、理性の部位(vmPFCなど)が、逆に「合理的な利己主義」を支えるようになってしまったのです。これは、社会の複雑化と個人主義の台頭によって、理性が共感を抑制する方向に働くという皮肉な展開です。

 つまり、人間は本来「利他的」な生き物だったのに、社会の変化によって「利己的」な行動が増えてしまったわけです。それは、進化ではなく“偏り”かもしれません。 なぜなら、利己主義者だけの集団は必ず自滅することが、心理学の研究で明らかになっているからです。
 このまま人類は自滅するのでしょうか?でも、私たちの中には今も、誰かを思いやる力がちゃんと残っています。それを思い出すことが、これからの社会を少しずつ変えていく第一歩になるのかもしれません。
 そのためにも、サムライ(孤高武士型気質)が持つ自律心や強い精神力が必要になるわけです。