グローバル化に溺れて社会が破綻した日本

 安倍政権の評判が良くない。特にコロナ対策では、それが目立つ。国民が求めている事と政策があまりにかけ離れているからであろうか。こまかい話はさておき、安倍政権の失敗の本質とは何か、メディアをはじめ評論家、各種の専門家が、誰もきちんと指摘できていない。

 たったひとことで、言い表すことが可能なのである。それが、「グローバル化に溺れた」ということである。これは言い換えれば、経済政策に失敗したという事である。

 今感染防止か経済回復かで、ぐちゃぐちゃになってしまったのも、経済が予想以上に悪化してしまい、身動きが取れない事も理由のひとつである。過去の1000兆円を越える馬鹿げた負債が0なら、対策もまた変えられたであろう。むろん、本質がわからない限り正しい政策は打てないが。多くの事柄は、たどっていくとお金の問題に突き当たる。

 一体経済政策の何が誤りであったのか。皮肉に言えば、トランプと真逆のことをしたからである。トランプはグローバル化に背をむけて、国内の雇用と景気を最優先にした。この経済政策は、世界の主要国において常識的な当たり前のことである。ところが、日本の歴代の指導者は、愚かな一部の勢力の言うことを鵜呑みにして、グローバル化一本の経済政策を強力に推し進めてしまったのである。特に安倍政権は、さらに悪いことに、そのグローバル化の相手をアメリカなどではなく中国というまともな資本主義の通用しない国に求めてしまったのである。そのために、身動きが取れなくなってしまった。

 こまかい話はこれ以上立ち入らないが、例えば地方の活性化という重要な事柄においても、ひたすら外国人観光客に頼るというグローバル化だけを進めてしまった。むろん、特区などを用意したにもかかわらず、地方もまた自ら稼ごうとせず、補助金ねだりに終始していたのも事実であるが。いずれにせよ、地方の生き延びる道が、インバウンドそれも中国人客頼みという歪んだ経済政策しか実行できなかったことが、今回のコロナ禍でも地方への有効な経済対策がうてない原因となっている。


 グローバル化を否定しているのではない。そういう動きに対して、もっと冷静にその功罪を理解すべきなのである。グローバル化とは、一部企業の利益の最大化と、労働者の収入の限りない低減をもたらす、いわば副作用がある事を理解していなくてはならない。馬鹿げたバラ色の話や、浮わついた近未来論などに踊らされた結果、日本はデフレも脱却出来ず、自国のあらゆる力(製造力、開発力、技術力等々)を失い、中国頼みの劣等国に成り下がってしまったのである。それを白日の下にさらしたのが、今回のコロナだったわけである。その意味では、むしろ、早く日本国民に気づかせる役目をコロナがしてくれたとも言える。

 ところが、肝心の安倍政権をはじめ社会の実権を握る人々の凝り固まった頭は、未だにこれに気がつけないでいる。その原因は気質としか言いようが無いが、この歪みをただそうにも、具体案を示すものがいないのである。


 経済政策でやらねばならなかった、今でもやらなければならないのは、グローバル化一本槍の政策から変更して、グローバル化は3割、後は内需拡大の経済政策の実行なのである。この内需拡大の具体策は、10年以上も前からHPで公開しているのだが、誰も見向きもしない。今からでも遅くはない。むしろ今回のコロナ禍は、地方経済の再生のチャンスでもある。なぜなら、地方は圧倒的に感染が少なくて済んでいる。それは、以前から有るような経済政策を気をつけながらでも実行することができる環境にある事を意味している。

 グローバル化一本やりとは全く別の、いわば一国二経済政策とでもいうべきものである。国内だけの閉じた経済圏であれば、そこでは労働者の賃金を途上国に合わせて下げる必要も無い。むしろ時給2千円などと言うことも可能になる。そうして、社会が二つに分かれたとき、多くの日本人はどちらを選ぶのであろうか?当然、国内経済であろう。そうなれば、グローバル化の企業は、より大胆なグローバル戦略に打って出ることも可能になるだろう。ま、その能力があるかどうかははなはだ疑問だが。

 
 コロナ対策で強権を発動できないのも、大量検査が出来ないのも、役所の規制に加えて、やはり大きいのが金が無いという事であろう。そこで焦って経済を動かそうとする。だがそのやり方が誤っており、またまた感染を広げてしまう。もはや悪循環におちいっているのだ。

 グローバル化を無条件礼賛した多くの日本人は、その責任をもっと自覚して欲しい物である。もっとも、それができるなら、はじめからこんな馬鹿な事にはなっていないのだろうが。せめて多くの国民には、正しく理解して欲しいと心から願う。

令和2年7月23日(木)

2020年07月23日