海の自動運転で日本が覇権を握るのに欠けているもの

 一時は物作り大国とか技術大国とか言われた日本ですが、今や見る影もありません。いまだに、これらを信じているというか信じたがる人も多いようですが、それでは戦前の軍部が犯した過ち、返事とを正しく認識せずに、楽観論に終始する、と変わりません。有る限られた分野では確かに優位を保つ物もありますが、携帯電話を見てもわかるように、日本製の最終製品はもはや世界で見かけることもなくなってしまいました。

 そんな中で何とか世界に負けずに頑張れそうな領域が、自動運転の領域です。これも軍事的にも利用される航空機の分野では全くだめでしょう。今自動車が頑張っていますが、これも標準化など日本が苦手なところで、思わぬ落とし穴に落ちかねません。宇宙の分野では、日本は産業としてすら育っていません。残るは海です。

 船の船員のなり手がないことなどもあり、船舶の自動運転はかなり技術が進んできています。しかし、この分野でも日本は部品供給に甘んじるだけになるのではないかと、危惧されています。この分野での課題として、日本には海外のような巨大なシステムインテグレータが不在である、と指摘されています。欧州では、こういう会社がすでに存在しており、また韓国では造船会社がこの役割をになっているというのです。

 日本において海の分野では、海運会社が強くて、造船や部品メーカーなどがそこに使われる構図になっています。そして、日本の海運会社はシステムインテグレータの機能を全く持ち合わせていません。これでは、海の自動小銃分野でも、また下請けに甘んじることになってしまいます。


 海の自動操縦分野において、日本は二つの事を考え無くてはならないでしょう。ひとつは、システムインテグレーションがあらゆる分野において欠けている点です。これはつきつめれば、IT文明への乗り遅れに他成りません。コロナ禍で日本社会のIT化の遅れが騒がれましたが、根はもっと深く深刻です。ですが、ここではもう一つの事を指摘しておきたいと思います。それは心の問題です。


 日本は海洋大国である、と言って素直にうなずく人がどれほどいるでしょうか。領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積は、世界第六位です。深い海溝が有り、体積で言えば、世界第四位です。まさに海洋大国なのです。日本改革私案「目次」「日本全土図を正しく表示」参照。
 また当たり前のように海産物を食糧の一部として利用しており、その摂取量も世界有数でしょう。

 去年も今年もサンマは不良で、漁獲量は大幅に減少しています。だすが、台湾と中国のサンマの水揚げは、日本よりもはるかに多くなっているのです。さらには、日本の漁場があらされたり、珊瑚が盗まれたりと、周辺酷による日本の海洋資源略奪も目立ちます。にも関わらず、海の権益保護は不十分です。海上保安庁は、世界第六位の海洋面積に対して、あまりにも貧弱です。また法律も未整備で、EEZの取り締まりは水産庁の違法操業取り締まり程度なのですから。彼らは丸腰ですし、何よりほとんど人員がいません。


 話を海の自動操縦に戻しましょう。これらに共通しているのは、日本政府だけでなく日本人全体に、日本は海洋大国であるという意識が希薄すぎる事でしょう。意識がなければ、関心も薄く、まして自国のものとして守ろうという気持ちもわきません。ほとんど海が利用されていないのです。

 海底資源も周辺国にねらわれているのに、手をこまねいている日本です。海の自動操縦分野においても、せっかくビジネス・チャンスがあるにもかかわらず、いまのままなら勝てないでしょう。もっと海洋大国の自覚を持って、積極的に海を活用する事に目を向けるべきなのです。

 日本改革私案には、海に関わる様々な具体案をのべていますので、よろしければご覧ください。

令和2年8月13日(木)

2020年08月13日