菅内閣のデジタル化推進への不安
いま、東京証券取引所でシステムトラブルが発生して、すべての取引が停止してしまった。普通こういう重要なシステムは、バックアップシステムがスタンバイ(準備して待ち構えていること)していて、稼働システムに障害が発生したら、直ちにバックアップシステムに切り替わるようになっているのだが、こういう当たり前のことができていなかったのだろうか?
大規模システムでは、システムそのものが大きすぎて、バックアップシステムをうまく用意できないこともあるが、それをやるのが基本設計である。基本設計の重要さは、ことが起きないとなかなか理解されない。ま、バックアップシステムはさておき、このところ日本のコンピュータシステムがらみの問題が多発している。
NTTドコモ口座を利用した不正引き出し事件では、NTTドコモだけではなく、多くの銀行のセキュリテイの甘さが、問題の根幹にある。そもそも同じようなことが昨年7Payで起きていたにもかかわらず、全く対策がとられていなかったのは、経営者の責任が問われてしかるべき事柄である。だが、誰もそれを言わない。
システムのトラブルや不備などの事例も、いろいろ明るみに出ている。企業や組織からは重要な情報や個人データが盗まれ放題といえる状況にある。
コロナ禍で、日本のデジタル化の遅れが問題になったというのだが、それは真っ赤な嘘である。コロナ以前から起きていたのに、眼を背けていたに過ぎない。特に情報の重要性への認識のなさ、機密保護などセキュリテイへの信じがたい無知と怠慢さは、限度を超えていた。にもかかわらず、官僚は無論、政治家も経営者も、現実を認識しなかった。
いま、菅内閣は、国や役所のデジタル化を目玉政策としてぶち上げ、デジタル庁創設に走っている。そのこと自体を悪いとは言わないが、個人的には非常に大きな不安を持っている。なぜなら、このデジタル化にさいして、およそ現状のセキュリテイやシステム不備の問題に対する発言が全く聞こえてこないからである。
個人を攻撃する気はないが、最もデジタルの詳しいという政治家の発言は、官僚そのもので、やたらとカタカナ、横文字を並べ立てている。私のつたないIT業界での経験からして、この手の人間は大抵一流の技術者や管理者ではない。本当にわかっている人やできる人は、したり顔でカタカナなど並べ立てない。
アメリカでシリコンバレーを始め多くの優れた人と会う機会もあったが、彼らは決してむやみやたらと訳のわからない新しい用語などは使わなかった。それを後生大事に自慢げに使うのは、大抵できの悪い日本人の側であった。
いま、デジタル化を騒ぐのであれば、まずやるべきは、今の日本のITシステムのひどさと、企業や役所のセキュリテイの現状調査であろう。そしてまず、この穴をうめてから、次の段階に進むのが筋であろう。それなしに突っ走れば、できあがったシステムは、反日勢力や犯罪者にとって格好の餌食になるだけである。IT化がすすめば、日本国民の情報がいとも簡単に盗まれる確率は格段に高くなる。その危機感を持たない政治家など、害悪でしかない。
私の不安が、簡単に吹き飛んでしまうことを、心から願っている。
令和2年10月1日(木)