量子暗号通信の実現で思うこと

 「東芝 次世代の暗号技術「量子暗号通信」来年度にも事業化へ」というニュースが流れました。久々に明るいニュースです。当事者がこれまで問題の多かった東芝だというのも、うれしいことです。

 量子理論が世の中に認められてからずいぶん経ちますが、一般の人々にとっては、未だになんだかよくわからないというのが本当のところでしょう。それが実社会に出てくるようになると、より身近なものになります。中でも、量子暗号通信はこれまでの通信を一変させる可能性があります。

 ここで量子暗号通信の中身に立ち入ることはしませんので、興味があれば入門書を一読されることをお勧めします。


 さて、明るいニュースに水を差すつもりはありませんが、いくつか指摘したいことがあります。一つは、日本の企業経営者の意識、もう一つが政治家・官僚との関係です。

 今回のニュースによれば、東芝はイギリスのブリティッシュテレコムとすでに提携し、アメリカ企業とも提携の調整に入ったとあります。では、日本企業はどうなっているのでしょうか?よもや同じ日本企業間で争っているのではないでしょうか。日本の企業経営者の多くは、とかく日本の企業を馬鹿にしたり、一緒に仕事することを嫌います。そのためにこれまでの国内でのくだらない競争の結果、最後は外国勢に負けると言うことが多くありました。

 通信で大手の英米企業と組めれば、事業収益もいち早く確保されます。また中国との競争に勝つためにも、いち早く世界市場を握る必要もあります。ですから、この提携模索はただしいのですが、だからといって、肝心の国内市場を中国にとられては元も子もありません。日本企業の経営者も、大きく国益を考えた上で、協力体制を構築すべき時です。

 もう一つが、政官の動きです。デジタル庁創設やIT推進は良いのですが、これまで先端技術のビジネスに政官が口出ししてうまくいった試しがありません。利権につながるとか、省庁権限の拡大などという、従来の考え方を持ち出せば、もはや国際競争においては勝ち目などありません。経済安保が当たり前となった今、先端ビジネスの競争とは、国と国の競争に他ならないのです。むろん協力するのが望ましいのですが、くれぐれも邪魔だけはして欲しくないものです。


 新しい科学研究も事業も、いくらでも転がっています。それを劣化の平成時代に、多くの日本人とりわけ企業人が怠けて何もやらずに済ませていたのです。こういう無能な経営者や企業は、社員の側から見捨てることにしましょう。

令和2年10月9日(金)

 

2020年10月09日