NTTドコモの完全子会社化に反対する通信事業者が28社という異常さ

 NTTが、NTTドコモの株式を取得して完全子会社化すると発表したが、それに対して通信事業者が28社(趣旨賛同が37社)が反対の意見を表明した。この問題、簡単なで実は案外難しい問題であるし、日本の産業界というか日本社会の文化も関係しているからなおややこしい。そもそも、一般の国民はほとんど関心が無いのが本当のところであろう。むしろ、その後に発表されたNTTドコモ携帯の低料金「20ギガで2980円」の方がよほど大きな関心事である。

 通信事業者の反対は、もとのNTT独占に戻りかねないからというのが最大の理由なのだが、ここではそのデメリットの話はひとまず脇に置いておき、別の話をしたい。それは現在日本の社会や産業が抱える問題そのものでもある。

 わかりやすく簡単に言ってしまえば、反対している通信事業者28社とはどこの誰なの、という話になる。KDDIとソフトバンクそれに楽天モバイルくらいはわかるけど、後はほとんどの国民が知らない企業であろう。SONYや昔からパソコン通信等の通信事業をやっている企業名を聞けば、ああそうかとわかる程度だと思う。つまり、この小さな日本でなぜ28社もの通信事業者が存在し続けているのかという疑問がわく。


 多くの参入企業が見られる分野では、公平な競争とすぐに口にするのだが、実態はまるで異なる。たとえば、携帯通信なら3社がまるで談合したかのように利益を分け合ってきた。この国の産業界で、国内企業だけでまともな競争による合併や収れんなどが起きたことなど、ほとんど記憶にないのである。
 また、その多くの企業群のなかから、新しいGAFAのような企業の誕生も見ることは出来ていない。楽天が唯一に近い例外といっても、まだ世界で楽天など相手にされていない。後から出た中国企業の巨大さにただ驚いているばかりなのが、日本の産業とりわけITや通信の分野なのである。

 この中小の企業の乱立という日本産業界の構造をたださない限り、日本企業が海外勢と戦えるようにはならないだろう。その意味でNTTの再結集は、グローバル化の潮流においては、正しい方向性なのである。むろん、これまでも世界に出ては負け続けてきたNTTが、これで勝てるなどとは全く思えないのだが、変わるかもしれないと期待するしかないだろう。


 中小企業が多すぎるというと、これこそが生産性の低い元凶だと騒いでいるのが聞こえそうだが、その論には全く賛同できないことだけは、はっきりとしておきたい。これも長くなるのでここでは立ち入らないが、一つの業界や分野にだけ多くの企業が集まり、その維持だけが目的化している日本の産業政策は明らかに間違っている。とくに、すでに世界規模でしか戦えない通信を含めたITの分野では、特にそれが顕著である。

 ネット上の新しいサービスやアプリで、いくつかの活躍する企業は見えるのだが、それが中国やアメリカ企業のように巨大になる可能性は、果たしてどの程度あるのだろうか。

 日本人の気質がからむ産業構造ではあるが、であればこそ、それを自覚した政策がとられな蹴ればならないはず。残念ながら、そのような動きはほとんど見えない。

令和2年12月3日(木)

2020年12月03日