医療崩壊騒ぎへの素朴な疑問

 今、医療崩壊が迫っていると連日メディアとりわけテレビのワイドショーなどが不安をあおり続けている。医師会は、海外のメディアを集めて(海外特派員協会での会見)までして、政府批判をあおっている。多くの医師や看護師が、もう限界だと窮状を訴える。北海道と大阪では、自衛隊への出動を要請し国もこれを認めた。

 さて、この日本のコロナ騒ぎに対して、いくつか素朴な疑問がわいてくる。ただ、あらかじめ断っておきたいのは、医療崩壊が迫ってなどいないと言うのではない。また、、多くの医師や看護師が現場でどれだけ苦しんで献身的に尽くしているかも、理解しているつもりである。さらに言えば、GoTo継続のために、経済悪化での自殺者数の増加を声高に叫ぶ人達と同じ考えなのでもない。

 くどくどと前置きをしたが、それでもいくつもの疑問があると言いたい。


 そもそも、日本は世界で最も先進的な医療体制が整った国だと、コロナ騒ぎ以前から自慢していたのではないのか?医療体制の整備には、感染症対策は含まれないのか?突然に起こる感染症への予防や対応策は含まれないのだろうか?

 最近の悪しき傾向で、何か人手が足らなくなると、すぐに自衛隊に出動要請をする。そのくせ、平時では自衛隊の足を引っ張るような言動や政策ばかり。どこまでふざけているのだろうか。
 大阪など、少し前まで全国一のコロナ対応で万全だと会見で言っていたのではないか。あれはどうなったのだ?なぜ、今になって看護師が足らないなどと言い出すのだろう。臨時の医療施設を作ると胸を張ったとき、ハードだけしか考えていなかったのだろうか?
 全国的に看護師不足なのに、なぜ自衛隊だけ看護師に余裕があるのだろう?本当に余裕なのか、それとも有無を言わせていないだけなのか?

 緊急医療体制が現場の献身的な努力によって支えられており、慢性的な人材不足なのは、コロナ以前から長い間問題になっていたはず。それをいまさら言われても、医師会は何をしていたのですかと聞きたくなる。

 緊急医療だけでなく、産婦人科や小児科など特定の診療科でも、なり手がいなかった。これを黙ってみていたのも医師会なのではないの?感染関係もほかの診療科より軽んじられていたでしょうに。なぜ全国の医師が助けないの?


 日本では国産ワクチンを開発する能力さえ失ってしまったに見えるのですが。国内の製薬会社は、ご多分に漏れず多くが目先の利益にだけ目を奪われて、技術革新など怠けてきた。技術力の劣化がこういうときにも露呈する。でも、ほとんど誰も騒がないのはなぜ?


 わからないのが、いまや全国の病院が経営難に陥っていて、国に補助金や支援を要請していることである。え、潰れるほど患者がいないなら、医師も看護師も余っていないのかな?インフルエンザの患者などがほとんどいなくなったので、経営できないというの?病院って、患者がいなくなるのを目指しているのではないの?これでは、患者を減らすことなど考えていないと、勘ぐられても仕方ないのでは?暇なら助けたら?医師の資格があっても、感染症は見れないなんて、一般の国民には理解しがたいのですが。


 日本の重症患者数は約500名規模、死者は2200名規模。日本は世界第3位の経済規模の国で、老齢化してるとはいえ人口も1億二千万人にのぼる。そして、今の日本のコロナの患者や死者は世界特に先進国などでみても、圧倒的に少ないという。その日本がこれだけ騒ぐのなら、ほかのコロナ流行国では、とっくのとうに医療崩壊はおきていることになる。なぜって日本が医療崩壊と騒ぐ10倍、100倍の感染規模なのだから。これらの国では一体どうしているのかな?
 むろん、医療が十分に整備されていない国では、棺桶が不足し、墓場まで不足しているという。ところが、ここまでいくと、今度は医療の話が聞こえてこなくなる。どうなっているのだろう?


 ほかにも素朴な疑問は多々ある。結局、今の日本社会は柔軟性の欠けた社会になり、突発的なことに対応することができなくなっているのではないだろうか。そして、メディアも一部の勢力も、自己保身や自己満足の発言や行動を繰り返すだけで、本当の現場に手を差し伸べていないのではないだろうか?


 もっと深刻な話をすれば、日本の医療の根本的な考え方、とにかく最善を尽くして救おうとする、この考えは尊いが、このやり方では大規模感染への対応として不十分なのではないだろうか?これは、日本文化つまりは日本人の感性にも関わることなので、軽々に口にすべきではないのかもしれないが。一部の国では、トリアージ(患者選別)は大規模災害・事故のときだけではなく、通常の医療現場でも行われているという。むろん、それが法制化されているわけでもなく、いわば暗黙のコンセンサスなのであろう。
また、製造業が品質過剰と言われていたように、医療看護や介護でも、他国と比べて手当が厚すぎるのではないだろうか。
 もちろんこれらは、国民の大多数が認める文化の裏付けがあって初めて成立する。したがって、日本でそれをやれなどとは、口が裂けても言わない。だが、それならなおさら、医療体制全体のあり方を根本から見直して改善すべきなのではないだろうか。医療費や薬価、病院のあり方から医師のありかた、健康保険などの社会保険のあり方まで含めて。

 コロナ騒ぎが一段落したときに始まる、官僚や既得権者、政治家の焼け太りをもはや許してはならない。何の解決策にもならないばかりか、国の衰退を早めるだけである。

 冷静な議論を拒否し、本質的な問題の改善をはからない限り、同じパニックは何度でも起こる。そのたびに日本は衰退していくだろう。


令和2年12月7日(月)

2020年12月07日