タリバンの攻勢を止められない現実は「力が正義」を示しているのか

アフガニスタンでは、アメリカが今月末での完全撤退を表明してから、反政府組織タリバンの軍事攻勢が非常に強くなり、多くの都市、州が陥落してしまった。アメリカのバイデン大統領は、自国民の安全な撤退のために三千人の軍を派遣したが、撤退計画は変わらないという。
アフガニスタン政府軍30万人に十分な軍事訓練を施し、最新装備を提供しているのだから、政府軍が自国を守るために戦うべきである、とも発言した。

国連やEUなども、攻撃停止要求やテロとの非難を続けているが、サリバン側はまったく意に返していない。もはや、首都カブールの陥落も時間の問題で、かっての南ベトナムが敗れたときと同じだというニュース論調も目立つ。むろん共産主義とはいえ、同じベトナム人による統一と、過激派テロを主体とする組織による国家転覆では、異なると思うのだが、確かに国家統治が変更してしまうという意味においては同じである。

アフガニスタンは、以前ソ連が侵攻して占領を図ったが、結局撤退した国である。911テロへの報復として、今度はアメリカが長きにわたって侵攻したのだが、これも結局は失敗に終わったことになる。今度はタリバンに中国が接近しているのだが、さすがに慎重に事を運んでいるように見える。この地政学的にも特殊な地域であるアフガニスタンという国を見ていると、結局は、武力を背景とした統治が行われない限り、一つの国としての体裁すら保てないことがよくわかる。

ここで、欧米の「力が正義」といういやな言葉が思い返される。いくら理想を並べ、自由だ人権だと声高に叫んでも、イスラム原理主義の過激派組織には通じない。アフガニスタンでの自由や女性の権利などは、また簡単に踏みにじられる時代に戻ってしまう。武力攻撃を押しとどめるだけの力が無ければ、どうにもならないのである。日本人の多く、というか今この国の実権を握る人々の多くが、この現実を無視して平気でいる。これでは、アフガニスタン政府と変わらないではないのだろうか。

それにしても自衛隊よりも多い人数のアフガニスタン軍が、なぜテロ組織の軍にかなわないのだろう。空軍もあるというが、あまりにも弱すぎる気がする。自国を命をかけて守るという気概がないからだろうか。自爆で天国に行けるという信念をもつ人達とでは、とても比較にならないのだろう。

アフガニスタンから邦人をすべて無事に帰国させられるのだろうか?自衛隊に救出に向かう力はあるのだろうか?具体的な実行力が今こそ問われている。すべての邦人の無事を祈りたい。残された時間は、米軍撤退の今月末までしかない。

令和3年8月14日(土)

 

2021年08月14日|分類:安保, 政治