外交の安保軽視が招く血税の無駄使い

 アフガニスタンの政権崩壊による混乱発生によって、アメリカではバイデン大統領への厳しい批判が起きています。そのような事柄から日本は無縁に思われますが、実は、日本の政治や外交の失敗を示してもいるのです。何かと言えば、ODA(政府開発援助)をはじめとする海外への援助や支援のあり方です。

 日本企業や政財界が中国にのめり込んだ行動を取り始めたとき、私は、相手先のカントリーリスクを考慮すべきだとブログなどでも度々述べてきました。これは中国だけではありませんでした。先のミャンマーの軍事クーデターや今回のアフガニスタンでのタリバンによる現政権の崩壊においても、日本は非常に難しい立場に立たされたばかりではなく、これまでの膨大な援助がすべて無駄になりかねないのです。いやすでに大部分無駄になったのでしょう。

 日本政府は2002年から2020年までの間に、アフガニスタン共和国に対して総額約70億ドル(約7700億円)のODA援助を行ってきました。2019年には、日本の対外無償援助のなかで第2位がアフガニスタンへの1億2000万ドルでした。第1位はミャンマーで1億7000万ドルです。無償援助とは要するに私たち国民の血税です。
 無償援助には無償資金協力と技術協力がありますので、その全体の援助額はなかなか捉えられませんが、相当な金額になるのは確かでしょう。


 それにしても無償援助1位と2位の国で、援助が無駄になるとはどういうことなのでしょうか。ネットの検索では「対外援助 問題点」「対外援助 失敗例」という項目があるくらいで、日本の対外援助の失敗は昔から色々とあるのが実情です。

 失敗の原因は色々とあり、論文も出ているようですから、今更口出しすることでもないのかもしれません。ですが、ここでは、あまり取り上げられていない失敗の要因について述べたいと思います。それは、相手の国民あるいは民族の気質をよく考えない事と、もう一つが相手国のカントリーリスクとりわけ安全保障上のリスクへの無知・無関心です。相手国の政治や社会体制にはどのようなカントリーリスクがあるのか、さらには、政治的な安定性(大きく言えば安全保障上)のリスクです。ミャンマーもアフガニスタンも、どちらも簡単に政権が転覆するカントリーリスクの高い国だったのです。


 日本の外交や政治は、安全保障を軽視するあまり、これまでも大きなミスや失敗を繰り返してきました。対外援助の失敗もその延長線上にある出来事なのです。外交の失敗は、国を危うくするのみならず、経済的にも損失を与えるのです。経済安全保障という概念まで出てきている現在の国際社会において、安全保障に無知であったり軽視することは許されません。

 単に欧米に追随するのも無論問題ですが、独自色を出そうとするあまりより大きな過ちを起こさないようにしてほしいものです。

令和3年8月25日(水)

 

2021年08月25日|分類:安保, 政治