ドローンを軽視した自衛隊はロシアと同じ
かなり厳しい表題ですが、これも強い危機感の現れと許していただきます。何より、自分が自衛隊シンパとも言えるからこそ、少しでも良くなって欲しいと心から願っているのです。
今の自衛隊が置かれた状況の問題点は、憲法9条の問題にまで広がってしまうので、今回立ち入りません。ただ、今の制限された状況下においても、まだ改善すべき点はあるのではないか、そのひとつがまさにこの問題だと思うのです。
ウクライナへのロシアの軍事侵攻において、西側先進国の予想以上にウクライナ軍が善戦していることが、当たり前のように報道されています。予想が外れたという意味では、世界の専門家の予想など、この程度のものだと我々に教えてくれました。また、戦況が複雑になるに従い、さすがのテレビのコメンテーターも、防衛省関係者の軍事の専門家が解説をするようになりました。これらは、平和ぼけ日本の現状にわずかでも風穴を開けたと言えるでしょう。
このウクライナの初期の善戦には、ドローンが主要な役割を果たしていることも、知られるようになりました。そんな中で、ドローンの大活躍を苦々しく思っているのはプーチンだけではない、自衛隊もそうなのだとの専門家の記事がありました。自衛隊は、これまでドローンを軽視し続けてきたというのです。この意見に、私もまた大賛成なのです。
まだ日本でもドローンが開発され始めたばかりの頃、(逆に中国はまだまだの時です)ドローンに対する自衛隊の対応に首をかしげていました。あまりにお粗末で、いい加減に見えたからです。それでも、軍事機密もあり、内部的にはきちんとやっているのだろうと思ったのですが、残念ながらそうではありませんでした。
その後、2018年(平成30年)8月にドローンに関するブログを書いたのが、まだHPに残っています。室蘭工業大学で国産の超音速ドローン「オオワシ2号」を開発しており、2020年には初飛行が実現するという記事に関するものです。
いったん脇にそれますが、一般にはドローンというと、あの模型のようなプロペラをいくつもつけた無人機を思い浮かべます。しかし軍事の分野では、すべての無人機の総称がドローンなのです。オオワシ2号も、特殊なエンジンを備えマッハ2で飛ぶ無人機のことでした。
いずれにせよ、無人機の開発を自衛隊も積極的にやっていると期待していた私は、ここでも自衛隊での採用などの進展を期待していたのです。ですが、オオワシ2号は、未だに開発中のようです。
実際今自衛隊が保有するドローンは、秋葉原で売っている民生品とフランスなど外国製のものばかりです。アメリカの無人攻撃機などは、金額的なものもあるのか、アメリカが出し渋るのか、自衛隊が軽視しているのか、本格的な実戦配備などしていないようです。
こういう自衛隊の現状を見てたとき、ドローンという兵器だけの問題ではないことにすぐ気がつきます。今の自衛隊が抱える根本的な問題があるのです。
指摘したい点はいくつもありますが、ひとつはドローンのような新しい技術への考え方、捉え方に問題があるようです。それは専門バカと呼べるような、専門家と呼ばれる人が陥りやすい罠です。自分たちはプロであり、よくわかっているのだから素人が口出しするなという態度です。自衛隊に限らず、企業や組織の技術者も同じ態度の人が多く見られます。これが、今の日本の劣化にもつながっているわけですが。
新しい技術などが生まれたとき、なまじ関連する技術者や専門家は、それを馬鹿にして否定的にに見る事が多いのです。私自身が技術畑にいたこともあるので、いやというほど経験してきました。かれらは、新しい技術の持つ可能性や生まれる新しい世界を想像することが出来ないのです。
ドローンへの自衛隊の態度はまさにこれです。オモチャで兵器になどならないとか、力不足で使い物にならないとか、否定的な見方ばかりで、今回のウクライナ軍の活用方法などは、おそらく気がついていなかったのでしょう。機能は理解していたのでしょうが、どう利用すれば戦力になるかがわからなかったのです。
高い戦車が携帯ミサイルにやられたり、ドローンとミサイルなどの組み合わせで仕留められたり、ロシアもまた過去の高機能兵器ばかりに目がいったのでしょう。ロシアのドローンを分解したら、エンジンは日本のラジコン用、カメラはキャノンの民生品で安く作られていたそうです。安く、大量に作るまで出来ていたなら、後は活用法だったわけですが、これができていなかったわけです。
他にも自衛隊の官僚化、体力重視の昔ながらの人材採用、人間軽視など多くの課題があります。この際、ドローンだけでなく、サイバーでも宇宙でも、新しい分野で口先だけではなく、より実践的な対応が望まれます。今の危機から見て、もう時間がないのですから。
令和4年4月28日(木)