ロシアへの経済制裁参加は33カ国だけの意味する事

 ロシアのウクライナ軍事侵攻では、欧米を中心とした西側諸国が国際的な経済制裁を行っている。珍しく日本も口先でなくてG7に歩調を合わせているために、ロシアからは報復の処置が成されている。外交官の追放やロシア入国禁止など、やられたことがないものもある。
 日本のメディアの報道だけを見ていると、世界中がロシアに制裁を行っているようにみえる。しかし、実態は大きく異なる。世界中で経済制裁に曲がりなりにも参加しているのは、わずかに33カ国にすぎない。世界には約200の国や地域*があるのだから、全体の17%にすぎないのだ。
  (*)世界にいくつの国があるのか、正確にはわからない。国として認める認めないとか、色々と事情がある。国連加盟が193カ国、日本が国と承認しているのが196カ国である。

 これが何を意味しているのか、単純にロシアへの経済制裁が効くとか効かないと言うこと以外に、もっと深く考える必要がある。そのいくつかを述べて見たい。
①すぐに水に流す日本人は、核兵器を落として大量殺戮を行った敵国のアメリカと兵器で仲良くしている。だが、他国の民族は日本人のような気質とは明らかに違う。植民地細策を行ってきた欧米に対する、旧植民地国や世界の見る目はそれほど単純ではない。
 世界の民族の心の奥底には、様々な人種差別感が存在している。白人側がいくら人種差別撤廃卯を叫んでも、差別されていた側の感情はそう簡単ではない。
②白人と非白人の対立だけではなく、他にも様々な対立軸がある。33カ国の中でも、アングロサクソンの覇権とそれに対抗したい独仏など非アングロサクソンの関係も微妙なのである。
③経済的に恵まれた先進国と、いつまでも発展途上国のままの多くの国々がある。BRICSと呼ばれる新興の大国候補国は、今回すべてロシアよりである。
④資源を持つ国々とそうでない国々の関係はさらに複雑になる。
⑤さらに民族間の争いと宗教やイデオロギー、政治形態の違いによる対立もある。
 実に様々な二項対立の軸が有り、世界の国々の関係は日本人が思うような簡単なものではない。複雑怪奇で自国の利益が最優先という前提で、国際関係はなりたっているのである。
 この複雑な関係が今後より大きな摩擦や衝突を生みかねない、そのきっかけを作ったのが今回のロシアのウクライナ軍事侵略なのである。混乱したしゃかいでは、より強いリーダーを求めるのが普通で有り、さらに多くの独裁者や覇権主義者が出現してくるであろう。
 民主主義に走り出した国々で、軍部や独裁政権が生まれているのも、そのひとつの現れである。

 のんきで単純な日本人は、次に侵略されるか、あるいは世界から相手にされなくなるか、瀬戸際にいる。政治改革をするには、まず国民自身がその意識を変えなくてはならない。

 経済制裁参加国がなぜ17%の国なのか、もっと掘り下げて考えるべきなのだ。

令和4年5月7日(土)

2022年05月07日|分類:安保, 政治