バイデン政権誕生でふと思うこと

 トランプからバイデンへ、アメリカの大統領がかわったが、これほど後味の悪い選挙も珍しい。一体何があったのか、本当のところはわからない。歴史に委ねるしかないのだろうか?ま、歴史も所詮は勝者の歴史なので、はてさてどうなるか。

 ただ、アメリカの亀裂はかなり以前から大きくなっていたが、その傷口を隠すことなく、むしろ広げて人々に認識させたのがトランプだったのだろう。それが彼の独裁者的気質によるものなのか、時代がそれを求めたのか、それもまた難しい疑問になるが、おそらく両方なのだろう。


 一連の世界の動きとあわせてみているとき、ふといくつかのことを感じた。予感したとも言えるのだが。

 ひとつが、アメリカにおける二大政党制の終焉。もうひとつが、ネットに代表される情報文明が、これまでの国家や組織の構造を破壊して、あらたな枠組みをつくってしまったということである。しかもその枠組みが今のところ、人類史そのものにとっては、褒められたものではないということ。

 外来崇拝の日本では、選挙制度を変えてまで二大政党制にしようと躍起になった。だが、その試みが成功する前に、本家の二大政党制が内部崩壊を起こしている。アメリカだけではなく、欧州などの先進国においても、その流れは明らかである。アメリカの民主党支持者をみていると、個人的にはどうしてこんなに利害の反する人達が一つに集まれるのか、不思議でならない。私には反トランプの一点だけでつながっていると言うよりは、もっと別の目に見えない鎖があるように思える。いや、鎖なら切れないが、それはもろい紙のひもであろう。

 リベラルという考え方、(本来の自由主義者という意味ではなく、日本で言うところの左翼的思考のこと)で、億万長者のIT経営者たちと、マイノリテイの貧困労働者たち、さらには理想に溺れる若者たちが、一つにつながるなどは本来ありえないことである。既得権益者たちが、既得権益を破壊しかねないトランプ的思考を潰すために、無知なよく言えば純粋な人々をたきつけて集めたようにしか見えないのである。
 だが、この呉越同舟はすでに内部から不満が噴出していると、この勢力に加担したリベラル・メディアの中からも指摘する声が出ている。

 つまり、これまでの様々な枠組みが制度疲労をおこしているなかでは、政治体制ですら無事ではないだろうと思えるのである。その流れがどこに向かうのかは、まだよくわからない。一時的な混乱の後に、あらたな二大政党制が生まれるのか、それとも民主党一党独裁の始まりなのか。これは中国に代表されるような、一党独裁政治体制下での国家統制資本主義や、感染症などへの統制的対処法がそれなりの効果を上げているように見える現在では、なおさら不透明さが増すのだろう。



 もう一つなんとなく感じたのが、新しい対立軸の誕生と対立の激化である。これまでも、圧倒的な国力を持つアメリカへの対抗策として、欧州は世界標準や経済のルールを自分たちに有利になるように決めて、それを世界に広げてきた。欧米の対立といっても、これまではお互いに旨く利用しあえて来た。しかし、それが終わるような気がする。なぜなら、実体経済や金融経済では、それなりにお互いうまくやれていたが、サイバー空間ではそうはいかない。サイバー空間においての覇権は、GAFAをみてもわかるように、圧倒的な独占になる。ほかにもサイバー空間における覇権は、国家間からすでに企業間に移っていることなどシュシュの原因が考えられるからだ。

 新しいサイバー市場という経済市場は、過去のルールややり方が通用しない世界である。さらにそこにも、必ず様々な覇権争うが持ち込まれるであろうことは容易に想像できる。すでに一部の国は、サイバー空間での国家的なテロや犯罪を行っている。ここにISのような過激派が進出して、今よりさらに過激なサイバーテロをおこなうようになれば、世界はどうなるのだろうか。
 全く新しいサーバー市場が成長するとともに、実社会での対立がそのまま持ち込まれて、様々な混乱と衝突がおきるだろう。


 どちらもあまり明るい予想ではない。日本人の悲観主義のなせる業で済めば良いのだが。すくなくともここ10年は、混沌とした世界が続くと見るのが自然のような気がする。



 日本で怖いのは、あまりにも過去の仕組みにすがりきったねぼけた政財官勢力や、リベラル/左翼が既得権益者として、社会の実権を握り続けていけば、いずれ大きな反動が起きるのではないかという点にある。それこそ、いつか来た道となりかねないのだ。今こそなんとしてでも、既存の歪みをたださなければ、自滅していくか、他国に支配される属国になる可能性すらある。

 アメリカ大統領選をみながら、やはり日本のことを考えてしまった。

令和3年1月22日(金)

2021年01月22日|分類:政治, 社会, 経済