グローバリズムがプーチンを生んだ
ロシアのウクライナ侵略は、このところウクライナがじりじりと追い込まれてきており、今後どうなるのか予断を許しません。軍事だけではなく、独裁者プーチンのしたたかな外交戦略などに、欧米はかなり手を焼いているのが現実のようです。
このウクライナ侵略は、世界の人々に様々な教訓を残しています。そのなかで、メディアなどおよそ誰もはっきりと言わないことがあります。それはこの傲慢な独裁者を生み出したのは、実は経済制裁をしている欧米諸国が世界に広めたグローバリズムによるものだという点です。
プーチンが高い支持率を持っているのは、言論統制が行き届いているからだけではありません。大多数の国民が、プーチン政治にそれなりに満足しているからです。旧ソ連崩壊による最低の生活から、現在の日常品があふれた豊かな生活を出来る社会に変わってきたのです。曲がりなりの生活の豊かさを与えてくれる為政者は、少しくらい独裁者であってもかまわないのです。自由を制約されても、大多数の国民にとってはそれほど大きな事ではないのです。
そしてこのロシアの復活を生み出したのは、プーチンの政治手腕の素晴らしさと言うよりは、東西冷戦が終結した結果生まれた世界の流れだったのです。それが世界で自由な経済活動を行い、より安いものを集めてくるグローバリズムだったのです。これは冷戦に勝った西側が繰り出した、アメリカ流経済主義でもあったわけです。
このグローバリズムの流れに乗って富を蓄えたのが、産油国です。企業ならば、価格カルテルなどの談合は厳しく処罰されるのに、産油国が集まって価格カルテルを結んで価格をつり上げても、世界はそれを追認しています。欧米の資源メジャーの利益のために、欧米諸国も認めてしまったわけです。本来石油輸出国機構(OPEC)に加盟していないロシアも歩調を合わせることで、石油やガスの価格を高く維持して儲けたわけです。
その石油とガスを大量に購入したのが、欧州各国です。ですから、経済制裁もまた腰砕けのものになっているわけです。ロシアの繁栄は、石油と天然ガスだけでは有りません。最近、世界の食糧難が叫ばれていますが、小麦をロシアとウクライナに頼る仕組みを作ったのもまたグローバリズムです。より安いところから買えば良いというグローバリズムの問題点を誰も考えなかったのです。飼料の原料などロシアに頼るものが世界的に価格高騰して、喜んでいるのはプーチンです。
プーチンもソ連崩壊時の貧しいロシアのままであったならば、ここまでの軍事行動もおこせなかったことでしょう。国力がたくわえられたからこそ、軍事力も増し侵略も可能になったのです。プーチンこそグローバリズムの恩恵を受けた独裁者だったのです。
コロナのパンデミックで、世界的なサプライチェーンが機能しなくなって、はじめてグローバリズム一辺倒の愚かさに世界は気がついたわけです。しかし、未だに日本ではこの誤りに気がつかず、中国依存に傾斜する経営者や政治家が後を絶ちません。愚かさが身を滅ぼす典型と言えるでしょう。
プーチンの脅しとやりかたをみて、世界中の独裁色が強い国家や為政者が、同じ事をやり始めようとしています。北朝鮮は、特に自分たちの核戦略に自信を持ってしまいました。グローバリズムへの偏重は、日本経済をゆがめて国民を貧しくしただけではなく、軍事的な安全保障まで危うくすることに一役買ってしまったのです。この過ちは厳しく糾弾されるべきでしょう。グローバリズムの世界と自国の内需振興の二つの経済政策をうまく調和させることこそ、これから日本が生き残る唯一の道なのです。
令和4年5月28日(土)