プーチン最大の誤算は変化に気づけなかった事
ロシアによるウクライナ一般人への暴行・拷問・殺害などの残虐行為の跡が、世界中にビデオで流されてしまい、ロシアの国際的地位は劣化するばかりになっています。日本では未だに親ロシア派なのか、親中という反日派なのか、戦争ではロシアに限らず起きることだとロシアを擁護する発言をしている人がいます。あのビデオを見てもまだ、それが言える心臓の強さには逆に感心してしまいます。かの人達は、人間としての当たり前の感情すら持ち合わせていないのでしょうか。
それはさておき、プーチンのウクライナ侵攻については、専門家などがどうしてこのような行動に出ているのか、疑問を述べる専門家も少なくありません。軍事的にはあり得ない作戦だとか、情報が正しく伝わっていないのではないかとか、様々な事が言われています。
ここでは、誰も言わないことを述べて見たいと思います。それは人間の性格に関わるものです。
今回プーチンは予想もつかなかった特別なことをやっているように言われていますが、果たして本当にそうでしょうか?むろん、一部で報道されたように、ガンやパーキンソン病を煩っているとしたら、健康状態から、精神状態にも悪影響が出て判断や決定に歪みが出ている可能性はあります。しかし、この病気説は今では全く語られなくなりました。したがって、病気説ははずして考えるべきでしょう。とすれば、はたして彼の行動や決定がこれまでと大きく違うといえるのでしょうか。
コロナ以降の二年くらいで、人との接触を避けて自分の殻に閉じこもり、特定の思想に傾倒してしまうことはあるでしょう。実際、汎ロシアという過去の栄光にとりつかれた歴史観を持ち、ロシアとウクライナ、ベラルーシが同じ民族のまま今も続いていると考えるような幻想を抱いてしまったのは事実でしょう。問題は、その後に起こした行動は、皆おなじような行動であり、今回のウクライナ侵攻だけが特別であったとは考えづらいのです。
実際ウクライナを徐々に侵略して、ついにはクリミアを占領・併合することに成功しました。ドンバス地方にも親ロシア派に事実上占領させ手、勝手に独立国の承認をしてしまいました。ここまでのところで、特にロシアは、現在欧米から制裁を受けているような、あるいは世界中から非難されるような状況には陥らなかったのです。
したがって、これまでやってきた事を、ウクライナ全体に広げてみただけなのです。過去の成功例があったために、今回も同じだろうと甘く考えたのは確かにミスですが、やっていることは変わっていません。周囲を取り囲んで逃げられなくしたうえで、集中攻撃をし、化学兵器など非人道的兵器の使用も、絨毯爆撃もすべて過去に他の国で実際に行ってきた事ばかりなのです。そして、それなりに成功を収めてきたのです。今回だけうまくいかないと考える方が難しかったかもしれません。
成功体験が、相手を見くびることにつながったのは否めないでしょう。しかし、一般人への虐殺行為も、住民を拉致して各地に連れて行ってしまうのも、ソ連やロシアの歴史において常に行われてきました。日本も条約など全く無視してせめこまれました。60万人もシベリアなどに連行されなくなりました。満州などでは、内地への引き上げの際に、多くの日本人が暴行や殺害されてきたのです。そして、どさくさ紛れに領土まで占領して返さない国なのです。ここまで来ると、残念ながらこういう民族性なのだと言わざるを得ません。それが戦後70年してかわるどころか、先祖返りしてしまっただけなのです。強大な権力を握ると徐々に独裁化し、やがて独裁者としての振る舞いを他国にもおこなうようになるのです。この経過は、歴史を見ればよくわかりますし、ミャンマー、タイ、トルコ、イラン、中国等々、今なお何も変わっていないのです。
そのような経過のなかで、最大の誤算は、アングロサクソン陣営が、過去の負けを認めて大きく反撃に出たこと、ウクライナ人の愛国心が強固であったこと、ウクライナは欧米から見て白人の仲間だとみていること、これらを見誤ったのです。例え同一の民族であったとしても、その後の文化や体制の違いは、別の民族に変えていくことも認識出来ていなかったのでしょう。親ロシア派の存在が、ウクライナ人全体の心情と見誤ることになったのです。
また、中東やアフリカなどでいくら残虐行為をしても、今回ほどには国際社会は騒ぎませんでした。様々な条件が重なったこともあるでしょうが、そこに白人による人種差別意識が全く影響していないとは言えないのではないでしょうか。このことにも気が回らなかったのでしょう。この話はまた別に取り上げます。
思考があるくくりに強固に撞着してしまうと、その外側が見えなくなってしまいます。彼もそのわなに落ちた一人なのです。今なお、そのわなから抜けられず、戦争拡大に走っているわけです。
令和4年9月24日(土)