防衛産業の維持の具体案

 自衛隊だけを顧客とする今の日本の防衛産業。どんどんじり貧が進み、いくつかの企業は防衛産業から撤退を始めている。このまま放置すれば、今後もこの流れは止められないまま防衛産業がなくなってしまう。

 日本の防衛・安保の観点から、ゆるがせに出来ない問題であるが、政治も国民も感心は薄く、放置されたままである。ここでは、これまで言われてきた防衛産業保護策とは少し異なる視点から、防衛産業の具体的な支援策を考えてみよう。

基本的な考え方

 防衛産業が、防衛用の製品だけで会社を維持するには、自国以外あるいは防衛産業以外の分野にも進出する必要がある。つまり防衛産業の企業の枠を広げるという基本的な考え方である。
 また、米国からの輸入一辺倒ではなく、自国産業の技術力向上の上からも、開発予算の大幅増は必要であるが。

 この基本的な考え方から出てくる具体案を、いくつか述べて見たい。

①防衛産業の業務範囲の拡大

 防衛産業というと兵器がすぐに思い浮かぶのだが、実は安全保証に関わる分野の裾野はかなり幅広い。なんと言っても、人間が中心の組織なのだから、そこに関わる分野は数多い。すぐに思いつくのが、隊員の食事である。自炊はもちろんなのだが、携帯食料などもかなり必要とされる。これら関連産業は、防衛産業とは見なされず、普通の産業として考えられることが多い。これらを武器を作る企業と一体化する考え方はできないだろうか。つまり、コングロマリットの企業形態である。

 自衛隊の携帯食料だけではなく、一般の非常食あるいは宇宙食なども含めた、非常食料を提供する企業を作りそれを傘下の企業とする方法である。企業規模の拡大は、企業維持のひとつの方策であろう。このような考え方をすると、非常に多くの関連企業のとりまとめが出来るはず。

②防衛と民業の両方を扱う

 前述の企業群は、関連分野のとりこみであった。同様の考え方は、軍需産業と民需の分野でも考えられる。例えば、無人機から民需用ドローンの製造まで範囲を広げる考え方である。軍需の専門技術を生かした、民需製品の開発を行うことで、規模と利益を確保する。とかく、民需に進出すると軍需をやめてしまうことが多いが、それは世界の潮流から見るとまとはずれである。もはや民需と軍需の技術的境界線がほとんど無くなってしまった現在、企業もまたそれにあわせるべきなのだ。

 潜水艦技術で観光用潜水艇(水中観光船)をつくるなど、ここでも多くの産業が考えられる。たとえば、防災関連は、防衛産業とも近い部分があるだろう。

③輸出の拡大

 軍需用品の輸出というとどうしても大型兵器の輸出に目がいきがちである。それは今後も輸出拡大の努力は続けるとして、他の関連製品もかなりの数に上るはずなので、これらの輸出にもっと力を入れるべきである。兵隊用衣料、医療品、兵站用備品など数多く考えられる。日本のつよいぞうせんでは、もっと多くの機会があるはず。

 関連製品以外にも、海上保安庁用の艦艇の輸出など、軍隊に近い部門用の製品をもっと輸出すべきである。その為の開発も考えるべき。大型船舶から身の回りの製品まで、様々な製品やサービスが考えられる。

 例えば、防衛企業が、防災などの分野の製品を扱っていれば、それも大きな輸出品になる。洪水時の水陸両用車などが例になる。


④システムの輸出

 防衛に関わる高度なシステムではなく、もっと身近で手軽なシステムを考える手もある。船舶間の簡単な通信システムなどである。要は、単品からシステムつまり運用から教育までも含めた総合的な製品の輸出である。それをこうどなものではなく、小さなものでつくるということになる。



 AIをはじめとした高度な技術の塊である軍需品を開発するには、優秀な人材と資金が必要なのは言うまでもない。そのためにも、軍需関連企業の統合による企業規模の拡大や、取り扱い製品の多様化などを考えるべきである。

 むろん、開発コスト低減の努力をもっと厳しく行う必要もあろう。同時に、防衛の軍事力のあり方そのものを根本から見直す必要もあるだろう。自衛隊の食事のパンの量を制限するような、戦前と同じ人間軽視の考え方や、0か100でしか考えない硬直した思考をやめるのは言うまでもあるまい。そこからも、新しい兵器・関連製品が生まれてくるだろう。


令和3年12月8日(水)

2021年12月08日|烈風飛檄のカテゴリー:idea