なんちゃって新幹線の役割

 内需拡大策を目的とする一国二経済政策の具体案を書きました。「泥棒が縄を綯う」(アマゾン電子出版)この中で、なんちゃって新幹線という具体案を提案しました。そこでは、A2地域間を結ぶ鉄道としてなんちゃって新幹線を取り上げました。A2地域というのは、地方の内需振興策を実行に移す具体的な場所です。これらの詳細については、本文をご参照ください。

 弊著では混乱を避けるためになんちゃって新幹線の役割はA2地域間を結ぶ鉄道とだけ述べました。しかし実際には、もう少し大きな役割を担うべきものと考えています。
 一つは、安全保障上の軍事的な役割です。北海道から九州まで、自衛隊の装備等の輸送任務です。ウクライナ戦争を見てもわかるように、戦時において最も重要な事のひとつは言うまでもなく兵站です。軍人や各種の兵器、弾薬、食料などを必要な所に届ける事です。戦前の日本軍は、これをあまりに軽んじたために、大変な辛酸をなめることになりました。
 大陸や太平洋など他国領に進出しない自衛隊になぜ兵站が重要なのでしょうか。それは防衛のためです。日本は確かに小さな島国ですが、南北に細長くそれなりの距離があります。また、多くの島々から成る国土ですから、必要な場所への兵站の重要性は変わりません。

 自衛隊がアメリカ軍のように潤沢な予算を持っていて、兵器も必要な場所に充分用意されているのならば別ですが、実態は恐ろしいほどに貧弱です。例えば自衛隊の戦車の数は540両(2022年)で2019年の560両からさらに減っています。戦車のような陸上専用兵器は、もはや不要だろうと言うことで戦車のような陸上装備は年々減らされています。となれば、有事の債に、国内の必要な場所に以下に早く戦車を届けられるのか、この兵站の手段は非常に重要なのです。ところが、戦後の無防備平和主義や反戦原理主義の蔓延によって、十分な数の装備品など全くありません。ウクライナ戦争のように本当に攻め込まれたとき、弾薬は数日しか持たないほどのわずかしかないと最近ようやく問題として語られるようになりました。

 このように兵器保持数が絶対的に少ないにもかかわらず、さらにお粗末なのが、兵站です。これも予算をほとんど付けられることもなく、また、自衛隊単独での兵站、平時と同じ様々な制限があり、機動的に動くことすら出来ません。戦車で言えば、北海道を中心に配備されているようですが、もし他の地域から敵が上陸してきたとき、どうやって戦車を配備するのでしょうか。北海道と九州の間で兵站の訓練を行ったとき、戦車などを運ぶのに1週間から1ヶ月も時間を要したのです。とっくに敵に国土の大部分を占領されていますよね。

 つまりなんちゃって新幹線の大きな役割のひとつは、軍需関連の円滑な輸送手段の提供なのです。A2政策がうまく運んで、なんちゃって新幹線が各地にできたなら、それらを結んで北海道から九州までの鉄道網を構築します。いつでも24時間必要なときに自衛隊の装備や隊員などを迅速に運べるようにしておくのです。これがあれば、24時間程度で北海道から九州まで物資を運ぶことが可能になるでしょう。

 沖縄や小笠原諸島などの島への兵站は、なんちゃって新幹線では無理でしょう。しかしここでも、輸送船と鉄道とのスムーズな連係は重要です。なお、北海道と本州間では、現在の青函トンネルとは別にもう一つ海底トンネルを結ぶのが良いと考えます。


 さて、この安保の役割ができるようであれば、他の役割もまたスムーズに行えます。それが貨物輸送です。何でも鉄道をやめてトラック輸送に変えた理由がよくわかりません。いまの鉄道網が貨物輸送に適した形になっていないからでしょう。
 なんちゃって新幹線の24時間運用、貨物と人の両方を運搬する特長が有効に機能すれば、もっと貨物輸送に切り替わるはずです。CO2削減と地域活性化にもつながります。
 これを実現するためには、現在のようにいわゆるローカル線の考え方ではだめです。鉄道会社も意識をあらためて、合併で企業体質の強化、貨物と人の両方を扱う、鉄道の駅からは、無人トラックなどを運用する業務などに仕事を広げる必要があります。こうすれば、今のような赤字垂れ流しばかりには成らないはずです。意識を変えることと、これまでの狭い行政範囲に縛られないことが重要です。


 北から南までつながった鉄道網があれば、現在の太平洋ベルト地帯中心の鉄道網に障害が起きたときのバックアップにも成ります。新幹線と同じ広軌道なのですから、非常時には、新幹線をそのまま乗り入れさせることも可能なはずです。

 一国二経済制度(A2)でも詳しく書きましたが、現在の縦割り行政や業務内容の固定化、制限を外して考えないかぎり、このような全国規模での政策は実行できないでしょう。そういう具体的な政策案をもち、かつ実行に移すやる気のある政治家の出現が望まれます。

令和4年10月16日(日)

 

2022年10月16日|烈風飛檄のカテゴリー:idea