大型商材の輸出にことごとく失敗する日本

 5年前に決まったインドへの新幹線輸出が、未だに動いていない。(「ガラパゴス新幹線より「安価・安全の鉄道システム」輸出を」参照)見積金額の高騰や地元住民の反対などによるのだが、このままなら中止か撤退あるいは他国に乗り換えられて終わることになるであろう。新幹線輸出は、かなり以前から国も国策として進めてきたのだが、台湾以外実績はまるで無い。それどころか、中国などに次々と案件をとられているのが現実である。

 新幹線だけではない。その前には、原発を輸出すると言うことで東芝が米企業を買収したが、福島第一原発の事故ですべてが無駄になった。ならばと、二酸化炭素排出を極力おさえた新しい石炭火力発電の輸出を考えた。これまたCO2排出で世界中からたたかれて、輸出どころではなくなった。

 ほかにも、潜水艦や軍用機などの軍事関連の輸出も、ことごとく他国に負けている。なぜなのだろうか?この原因についてもっと謙虚に突き詰めて改善を図らない限り、今後日本の輸出は部品のみになりかねない。


 原因としていくつか考えられる。その最大のものは、日本の産業界や社会全体の劣化がある。さらに、グローバル化という言葉に踊らされて、製造の基本が国内から失われたこともあるだろう。また携帯のように日本製品のガラパゴス化が、過剰品質と高価格を生む原因にもなっている。だが、このガラパゴス化は未だに直っていない。

 ほかにも、最終製品を作る力を喪失したことで、大規模なシステム商品などは、さらに手が出ない状況になってしまった。目先の利益だけを追った経営者などによって、日本企業の力は信じられないほどに劣化しているのである。


 大規模システムやインフラさらには軍事品で言えば、ハードとソフトだけではなく、運用まで含めた総合提案ができないこともあろう。

 もっと惨めなのが、インド新幹線で露呈したいい加減な見積もりである。1.8兆円から2.5兆円に事業費が跳ね上がったという。これは、日本でよくやる、安く見積もっておいて、受注したら追加費用を上乗せしていくやり方である。海外はそんな甘くない。インドははじめから、追加費用は負担しないと言っており、事業の継続は無理であろう。さらに、車両などの製造についても、インド国内での製造にこだわるインド政府の狙いは、技術の日本からの獲得であろう。中国に許したのだから、インドにもとさえ考えているかもしれない。

 これらは、海外を国内と同じやり方や見通しで、甘く考えている事に大きな原因がある。グローバル化といいながら、実態は、日本産業の海外移転だけに過ぎないのである。まずは日本人と外国人は違うと、厳しく自覚する必要があるのだが。

 歪んだグローバリズムのまま、国内の製造業の劣化がさらに進めば、輸出もいずれはなくなってしまうだろう。

 このような本質的な課題について、ほとんどどこからも意見などがでてこないところに、日本社会の劣化のひどさがうかがえる。対策のひとつは「日本人の気質」などを読んでもらい、何が問題で、どうしたらよいのか、多くの人に考えてもらうことにつきよう。

令和2年12月15日(火)

2020年12月15日|烈風飛檄のカテゴリー:idea