宇宙産業の戦略構築と開発研究を急げ
インドが、100回目のロケット打ち上げを行った。それには、フランスの地球観測衛星と日本の小型人工衛星が搭載されており、2基とも軌道に投入された。
一方、日本では安価な小型衛星の開発が盛んで、4基の超小型衛星が新たに開発された。こちらは、ロシアのロケットで打ち上げられることになっている。
人工衛星の需要は今後とも世界的に増加する見込みで、世界市場での競争に勝つためにも、日本の得意な小型化技術を駆使した小型衛星を安価に開発することは、重要である。問題は、打ち上げのロケット本体である。
技術的には何とか先進国に属しているのだが、いかんせん、あまりにも高い。とても産業として市場で勝てるような代物ではない。これについては、すでに何度も述べてきた。日本の衛星なのに、日本のロケットを使わない悪循環に落ち入っている。産業界側の問題、開発・製造における日本メーカの高コスト体質以外にも、問題がある。
それは、いうまでもない、宇宙開発と宇宙産業両方での、基本的な戦略のなさである。新幹線や道路も重要なのだが、わずかの距離ですぐ1兆円を軽く超えてしまうものを、日本中でやすやすと許可してきた。いっぽう、宇宙開発予算は先細りしており、わずか3390億円(2010年)で、どこか1箇所の新幹線予算にも及ばないのだ。
日本は製造業こそ基本とか言いながら、実態は、目先の土建業だけに投資をし、また自治体も自分のところが潤えばよいという近視眼的要求になっている。真に先端技術を重視するのであれば、それが産業としても成立するところまで考えて初めて意味があろう。バブルの金あまりの時代なら、産業化を無視した技術開発もありえたかもしれないが、もはやそのような時代が来ることは当分ない。また、実際、そのバブル時にも、日本が有人飛行をしたり、太陽観測をしたりなど、先進的な技術を開発した記録もない。せいぜい、国際宇宙ステーションに実験棟を作った程度である。むろん、これはこれで意味あるのだが。コストに見合う活用がなされているのか、正直、疑問である。
結局、すべては、基本戦略のなさと、有効な政策の実施がなされていないことが、最大の問題なのである。ロケットも、役人の縦割りの犠牲になったり、様々な制約で自由に打ち上げもできないようでは、どうにもならないであろう。このままいけば、日本はまちがいなく、世界の宇宙探査、宇宙開発技術で取り残されることになる。部品供給の下請けになってしまった、製造業と同じ道を歩むことになる。
ロケット技術の向上と産業化のために、ひとつの提案がある。それは、国産ミサイル開発である。軍需産業を頭から否定しておきながら、そこからの技術の恩恵を利用することには、何ら恥じもためらいも見せない今の日本人の多くは、反対するのかもしれない。だが、なにも、かってのような軍需産業を育成しろといっているのではない、国家の安全保障上の要請を具体的に考えたとき、全面核武装でもするのでなければ、日本にとってミサイル防衛は重要な課題である。といって、アメリカから購入しているだけでは、日本の産業力の向上には結びつかない。ライセンス生産だけではなく、真の国産開発を積極的に進めるべきなのである。
日本の技術で得意なのは、言うまでもない小型化である。そして、今ならまだロケット技術もそこそこあるし、材料等の素材製造力もある。としたならば、防衛のための安価な国産ミサイル群の開発は、宇宙用ロケットの開発にもつながるのではないだろうか。専門家から、ミサイルと宇宙用ロケットはまったく別物だとお叱りを受けそうだが、企業群が、両方を扱えるならば、コストも安くなり競争力も出てくるのではないだろうか。なにより小型で馬力のあるエンジンの開発が期待できる。それは、航空機、船舶など他のエンジン技術にも利用できるものが出てくるのではないだろうか。是非とも進めてほしいものである。
こういう、具体的で、現実的な効果が見込めるようなことを考えるのが、政治家や役人の仕事であろう。昔は、まだ少しはいたようであるが、いまや絶滅したのだろうか。
平成24年(2012)09月10日