日本全体の在り方について

日本改革における国土全体の有り様を考える

「日本全体の在り方」図

 いま、全国どこに行っても駅前は同じような作りで、○○銀座なる商店街名が目につく。少しずつ変わり始めたとはいえ、全国横並びで変わり映えのしない金太郎飴のような現状は、見ていて悲しくなる。東京を中心とした首都圏にすべてが集中し、一向に改まらない。それどころか、2020年のオリンピックに向けて、一時衰えた一極集中には、ますます拍車がかかっている。
 地方創生、特区など叫ばれても、真剣に考える人々が地方にいないのか、結局は既得権者たちが邪魔をするのか、なぜか成果は上がらない。自由競争を基本に繁栄を続けてきたアメリカ自体、急激に進む経済格差に中間層までもが異議を唱えるようになってきた。アメリカの後を追いかけてきた日本が、このままでよいわけはない。ではどうするのか。

 官僚、既得権者、それらに踊らされる政治家によって、東京集中は一向に改善されないままなのだが、一方で首都圏の直下型地震はもはや逃れようのない現実として語られ始めている。いまなら、総理大臣が指導力を発揮すれば、日本の在り方を変えてゆく一歩が踏み出せるはずである。東京全滅が日本沈没とならないために。

 日本全体の在り方図で示したのは、基本的な考え方である。やれ道州制だ、特区だ、権限委譲だと騒いでも、これまでにどれほどの成功例があるのだろうか。結局は、何をどうするという大きな設計図を描ける、もっといえば、アイデアを出せる人材が少なすぎるのだろう。そして、それを積極的に受け入れる国民も。まずは既得権者とりわけ官僚と政治家の反対を招かない範囲で、手をつけられることからはじめよう。僭越ではあるが、いくつかのアイデアを述べてみたい。

すぐ出来る首都機能の分散

 現在の東京に集中する多くの機能を分けて地方に持っていこうとすると反対も多く、また費用も膨大で現実的ではない。それでも、いくつかの機能は移すことが可能である。これにより健全な国土利用の第一歩を確実に踏み出すことが出来るだろう。

「機能分散」図:地図を眺めながら何をどこに配置するか戦国武将のごとく考えよう!

 次のようなものは、比較的容易に地方移転が可能であろう。

①新しい機能
②副次代替(バックアップ)機能
③独立した機能


①新しい機能

  情報省、防災省は、どちらも災害に対する強固な備えが必要である。したがって、新設時には、国土の中でも災害が最も少ない地域を選ぶことになる。特に、太平洋側の大地震をさけるためには、内陸か日本海側になろう。情報省と防災省の速やかな新設については、それぞれの項目を参照されたい。

②副次代替(バックアップ)機能

  首都圏にすでに存在する機能のバックアップを地方に移転する。これをそのまま許すと、現在と同じようにひたすら東京の小型版を地方に作ろうとすることになるので、厳格な条件設定が求められる。この歯止めが働かなければ、現状の改革にはなり得ない。従って、現時点で考えられるのは第二皇居くらいであろうか。   皇居のバックアップなら、かなり大きな効果を生み出せるであろう。それを中心にして、ホテルなど観光地とするか、国際会議場などにするか、はたまた、博物館などの地域とするか、アイデアはいくらでもわいてくる。ただ、すでにあるものとは異なる独自色を何にするのかは、知恵のだしどころであろう。
  ほかにも、警察や自衛隊などすでに分散配置されているものでも、その中枢機能が本当に分散化されているのか、もう一度見直すべきかもしれない。ただ、これらの機能や施設は、それを核とした新たな追加機能や独自機能を周辺に作るのは難しいかもしれない。

③独立した機能

 アメリカでは、政治と経済の中心が分かれている。なぜか、日本ではそうなっていない。今更それをいきなりやることは困難であろう。しかし、三権分立のうち司法を別にすることは、それほど大きな混乱も生じないであろう。具体的には、最高裁判所を移転させるのである。そうすれば、そこが司法の中心となる。できれば、法務省も移設したいが、官僚次第だろう。しかし現実に司法機能の中心が他に行けば、法務省も取り残されたくないはずなのだが。

 これだけでも、すでに4つの大きな機能が地方に分散されることになる。首都直下型大地震が起きて、国家機能が麻痺してからでは遅いのだ。出来るところからは始めるのが、政治の責任であり、続く世代に責任を持つ全国民の義務でもある。

機能分散時の留意点

大きな目的のひとつが、首都圏で発生が予測されている大災害への備えであるから、東京の機能を大阪に持っていくなどと言うばかげた事はあってはならない。同一災害発生地域と予想されるところもだめである。つまり各種災害が同時には起こらないであろう地域である事が条件になる。

東京にも機能を残すというような姑息な事を許してはならない。逆に言うと、それなりの人口を移住させられる場所である必要もあるのだろう。いくら災害に強くても、百人程度しか住めないというのでは、無理がある。

できる限り交通の便がよいころ。国土をネットワーク化するものはやはり交通網である。従って、首都圏など他の大都市地域との交通の便が良いにこしたことはない。

借金大国の日本ではもはや、地方に大金をばらまくだけの財政力は残っていない。したがって、政府が補助金の形で支援することはないというのが大前提である。政府は、力業で機能を地方に移すところまでで、後はその地域が、それを核としていかなる独自機能を持たせるか。どのような地域とするのか、それが最も重要な点である。

独自機能とともに大切なのが、人材と雇用である。移転される機能に関係する企業や組織を呼びこむことが出来なければ、真の機能分散は成立しない。独自機能とも関係するが、どのような雇用創出をはかるのか、その仕掛けが必要になる。

 もうひとつが、仮に企業などを呼べたとして、今度はそこに供給する人材である。機能に関わる専門知識を学んだ人材を排出するための学校が必要になろう。地域の大学などが、はじめからそのような専門分野を持っていれば話ははやいが、なければ、どうやって専門家を育てる学校を作るかも考えなくてはならない。


「機能分散の例」図



 国からの財政的支援が望めないなか、どのように元になる資金を調達するのかが課題になるだろう。とりあえずは、プロジェクト地方債の発行でまかなうしかあるまい。だが、過去の多くの箱物行政のようなことをやれば借金だけが残る。しかも今度はそれを返済する余力をないであろうから、夕張の二の舞も考えられる。そのことを地域住民が覚悟し、納得した上での計画である必要がある。住民に意識がなければ、成功はかなわないだろう。ハイエナの餌食となるだけである。

 沖縄などに誘致した国際機関や研究機関など多数あるが、それを核として地域ができあがった話はあまり聞こえてこない。施設単独だけを作っても、それだけでは所詮箱物行政に終わる危険性がある。それを核としてどのように地域に広げてゆくか、日本の中で「ある機能の中心地」にまで持って行かなければ、機能分散とは呼べない。

 烈風飛檄でも色々述べているが、核となるもののアイデアはいくらでもあるはず。いかに複合的な視点で総合的な計画を描けるか、地域社会のリーダーの力量と住民の意志が試されている。



平成27年(2015)06月28日

2020年12月14日|烈風飛檄のカテゴリー:basic