アベノミクス2:指針(ガイドライン)

安倍総理への提言」から

 改革の邪魔をするのが、既存勢力の牙城で有り、同時に実質的な立法組織(法律の具体的条文を作る)たる官僚組織である。従って、アベノミクス2でも、必要な法律の改正をするのでは時間がかかる上に、なし崩しにされることも多いと考えられる。明治以前なら、殿様の一言で実行も可能なのだが、民主主義の世の中ではそうも行かない。したがって、出来る限り既存の法律を変えずに、通達などで済ませたり、地域の自治体の条例によるのが望ましい。

 せっかく新しいことをやるのに、改革内容が全く含まれないのでは、実施の効果が半減してしまう。なにより、やる気のある人が集まらない。そこで、法律にはなっていなくても、総理大臣がかくあるべきと指針(ガイドライン)を示すことで、改革内容が実行されるよう促していく。つまり指針は、改革後の姿を現場で先取りしてもらう為の物である。むろん、自治体による税法上の優遇措置などの利点がなければ、なかなか実行されにくいかも知れないが、特区において、新しい企業の在り方などを進めたいと考える改革派には、むしろ後押しとなろう。

【特区受け入れ側向けの指針】

 地域全体を開発するのであるから、当然より良いインフラ整備などが行われなくてはならない。そのためには、最低限これは成すべき事柄という指針を示す必要がある。

 ・その地域の災害予想に応じた街作りを基本とする。電気は、単なるバックアップではなく、地熱発電などの地産地消電源を必ず組み込む。

 ・生活基盤のインフラ(電気、ガス、水道、下水、通信等)を整備する前提で都市計画をつくる。電柱を地下に埋めるとか、下水とは別に雨水用下水を設けるなども当然含まれる。

 ・交通網。いまの新幹線よりもっと手軽な高速鉄道をつくるべきで、これは贅肉をそぎおとすことなので、新規開発は不要なはず。同じ標準軌で時速200kの手軽な鉄道などにして、高額な新幹線にこだわらない。鉄道の駅を地域の真ん中にするのはもはや古い考え。むしろ、鉄道は周辺に配置して、邪魔にならないようにする。また、道路も初めから無人車用道路などを考慮しておく。既存の新幹線や高速道路との接続を考えれば、無駄な投資は抑えられる。

 ・住宅地での分譲住宅は、50坪以上/屋とさせる。無人宅配受け箱の設置、防犯用カメラ等などの付帯設備の標準も決めておく。また、三世帯以上の住居となるべく、各メーカーに標準間取りを作り直させる。

 ・たとえば、川の両岸、空港やヘリポートの周辺など、環境が懸念される場所には、初めから住宅禁止区域を設けておく。そこには、スポーツ施設、ランニングロード、ドックランなどいつでも閉鎖できる施設を設ける。

 ・インフラは、その保守管理をする企業を新設時に決めておく。これは、地元の雇用が長く続く証にもなる。

 ・新しい指針に基づく企業などには、税制上の優遇策を講じる。これで人を集められる。

【進出する企業側への指針】

 人が集まるには、そこに仕事がなくてはならない。その為には、企業が必要である。しかし、これまでのような単に安い労働者を求める企業をいくら集めても、人は集まらない。積極的に新しい事業や、新しい企業の在り方を先導する企業が必要なのである。給与が高くても他にメリットがあれば、企業は集まる。その新しい企業の在り方を提示するのが指針である。

 すでに永続している企業の体制を大きく変えさせるのはなかなか困難である。そこで、新地域に進出する企業は、ベンチャーのみならず既存企業が新しく作った子会社などを優先させる。逆に言えば、新しい企業の在り方をここで試せるというメリットも大企業などにはある。  空前の高利益を上げていながら、賃金に反映させない企業ばかりであるが、企業側にも言い分はある。それは、これまでの給与慣行や、正規社員への過剰優遇などであろう。したがって、企業と労働者の双方に利点のある体制を初めからつくればよいのだ。それが、別会社などを作る理由でもある。

 ・既存企業の問題に、高額な退職金とそれに合わせた年功序列型給与体系がある。これをやめて、職能別給与体系、退職金の原則廃止をすれば、負担は軽減される。むろん、引き替えに、利益の即時分配と一律定年制の廃止が必要である。その年の余剰利益は、正規、非正規社員にかかわらず、決算後に均等に分配することで、常に企業業績が正しく従業員に反映されることになる。
 職種によって給与が異なると言うことは、募集時にも、職種を決めて採用することになる。これで、3年以内の離職率が3割などと言うばかげた事も軽減されるはず。また、男女間、正規非正規間などの企業内格差も是正される。格差の存在が企業に望ましいから、なかなか改善されないのである。格差がデメリットになれば、企業はたちまち格差策を辞めるだろう。

 ・人が集まらない職種なら、給与を上げるか、機械化、自動化を進めることになる。


 こういう指針を決めても、守らないのがいまの日本社会の悲しい現実である。したがって、厳しい監視と罰則が必要になる。もはや企業は利益をひたすら追求するだけではいけない、より社会貢献が必要であるとされている。日本でも少し前までは松下幸之助のように、企業は社会の公器であるという考え方が普通に存在していた。しかし、バブルに浮かれ目先の欲にとりつかれた現在の経営者の多くが、企業の社会的責任(corporate social responsibility:CSR)すら正しく理解していない。欧米では、CSRを守らない企業への投資は成されないどころか、さらに進んでいる。それが、ESGである。

 ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもので、企業の長期的な成長のためには、ESGが示す3つの観点が必要だという考え方。CSRをさらに一歩進めたものとも言える。
 この世界の新しい潮流に乗り遅れている日本企業と日本社会。元々の日本社会においては、このような考え方は当たり前の商業道徳だったのである。したがって、その事をきちんと提示すれば、日本人はそれに適応していくだろう。

 CSR指標あるいはESG指標を決めて、それを守る企業には税制上の優遇措置を与えるなど積極的に誘致する。この指標の内容の詳細には入らないが、例えばこのようなものである。

 ―性別、年齢等による賃金格差の禁止が守られているか
 ―正規社員と非正規社員との賃金格差の上限は10%迄とする
 ―労働時間の選択制。たとえば、週3日労働、毎日3時間労働等。
 ―利益の従業員への分配率。内部留保率との比率。
 ―国内投資と海外投資の比率
 ―自国民の雇用者比率
 ―新技術の積極的導入  等々

 要はどれだけこの自国社会に貢献できているのかと言うことである。自社利益のみを追求する企業の排除でもある。

 近い将来、法人税はすべての企業(NPO等も含む)に平等に課すが、その税率は低く抑えられる。かわりに、社会貢献税として各企業ごとのESG指標によって税額が決まる。そんな社会が来るように思う。それを先取りする形で、新しい指針(ガイドライン)として提示すれば、会社も人も集まるだろう。それは日本社会全体の改革にもつながっていくはずである。


平成30(2018)年9月17日(月)

 

2018年10月20日|烈風飛檄のカテゴリー:idea