ガイドラインI-分譲住宅

 特区地域内での分譲住宅についても、最低限のガイドラインを作成します。その最大の目玉は、分譲敷地の面積に最小限度を設ける事です。いま、都心の分譲住宅と言えば、ほとんどが30-35坪程度の二階建てが中心です。これではあまりにも敷地が狭すぎて、決まり切った住宅しか建築できませんし、なにより将来への柔軟性に欠けています。

 そこで、分譲住宅の敷地面積の最小限度を70坪から100坪とします。これよりも小さくして分譲してはならないとします。元来地方では一軒家の敷地は広くとられているのが普通なのですが、都市化されると必ずと言って良いほどに、狭い敷地になってしまいます。土地の値段が極端に上がるのも一因でしょう。ですから、特定区域内では土地の転売目的での売買を禁止して、土地の価格が上がることを制限します。地価が上がることが経済効果だと勘違いしている人が多いようですが、使えるお金が少額なのに、そのほとんどを土地代に使ってしまうから、そのほかの様々な消費にお金が回らないのです。


 住宅敷地を70坪あるいは100坪にすることでどのような利点があるのでしょうか。

1.二世帯住宅を基本にできる。
2.使用目的に合わせた自由な住宅設計が可能になる。
3.隣家との間が保たれる利点ができる。
4.敷地内に様々な設備を置くことが可能になる。それには将来の技術革新への対応も含まれる。
5.住宅メーカがよりよい住宅設計を競争する基盤が出来る。

 順に見ていきましょう。

1.二世帯住宅を基本にできる。

 親から子へと動物の基本である種の連続性、継続性を断ち切って親と子供をバラバラにする、すなわち家庭という制度を崩壊させる勢力についての話は、ここでは脇に置くことにします。狭い住宅で二世帯がくらすのは、今の社会構造や精神環境の面からも無理があるでしょう。ですが、100坪もあれば、母屋と離れとか、まったく別の2住宅とか、お互い過度に干渉しない形での近距離関係を築くことが出来ます。

 働き方改革や在宅勤務などの普及に、住宅がまったく追いついていません。夫婦それぞれが個室を持ち、そこで在宅勤務などが出来るようにならなくてはなりません。それには今のような狭い間取りではどうにもなりません。これからは子供に「働きに行ってきます」と言って自分の部屋に入る、そんな光景が当たり前になるでしょう。そのためにも、すべての部屋に電気だけでなく通信回線さらには、セキュリテイアラームなどのインフラが必要になります。

 必ずしも二世帯同居でなくてもかまわないのは当然です。その場合でも広い敷地が次の目的に合致してきます。

2.使用目的に合わせた自由な住宅設計が可能になる。

 自宅を使ってちょっとしたお稽古事などを教えている人はかなりの数います。その場合に、敷地が広ければあらかじめ別棟に教室を設けることも出来ます。あるいは、趣味の音楽やスポーツ用の設備を持った建物を別に建てることが容易になります。防音や振動対策も容易になるはずです。これはまた隣近所へ気を遣いすぎることなく、自分の生活をすることにもつながります。

 あるいは日本庭園や盆栽など、狭い庭では出来なかったことも可能になります。犬小屋も広くしてあげましょう。

 防災を強化することにもつながります。洪水が予想される地域なら、水の浸入を防ぐ家にしたり、雪に備えて屋根から自動的に雪を下ろす設備を備えたり、地震に備えて頑強な避難小屋を作ることも出来ます。核シェルターが欲しい方も備えられます。

3.隣家との間が保たれる利点ができる。

 騒音対策だけではなく、間を開けることで火災時の延焼防止などにも役立ちます。はみ出した樹木でもめることもないでしょう。問題は起きてから対処するのではなく、事前に起きないように予防することが大切なのです。

4.敷地内に様々な設備を置くことが可能になる。それには将来の技術革新への対応も含まれる。

 すでに2でも触れましたが、敷地に余裕があれば、それを有効に活用することが出来ます。その中には、これからの新しい技術によって生まれる設備なども置くことが可能になるのです。

 たとえば、これから宅配が空と陸から無人で行われるようになります。そのとき、無人の宅配車はどこに止まって荷物を下ろすのでしょうか。そういうことが社会のルールとして決まっていることが、技術を理由する上では必要なのです。ドローンによる配送でも、家のどこを目指して降りてくれば良いのでしょうか。ヘリコプターの着陸マークがあるように、決められた宅配ドロン-用マークも、敷地に余裕があれば作ることが出来るのです。

 これから重要になる防犯設備の各種装置も標準化されたものが出てくるでしょう。敷地内を死角なく捉えたカメラ群への電源供給や無線設備など、いろいろなものがでてくるでしょう。

 バッテリーを含めた電源の多重化装置など特定の家でしか使われなかったものが、標準設備になるでしょう。それもまた置く場所がいるのです。

5.住宅メーカがよりよい住宅設計を競争する基盤が出来る。

 1-4を考えたとき、これまでのようにどれも同じ間取りの住宅や、極端に自前設計の住宅ではなく、様々な要望に応えられる自由設計の住宅が、あたりまえになります。それは住宅メーカに新たな競争を生み出すだけではなく、それが新しい産業として経済に貢献することになるのです。

 特定の不動産屋しか儲からない高価な土地ではなく、その分で様々な特徴ある住宅をつくる、それこそが、特区の住宅ガイドラインを設ける理由の一つです。



 特区内インフラのガイドラインとしては、これまでは住宅の外の道路までがインフラの範囲として考えられてきましたが、これからは、住宅の中まで含めたインフラの考え方が重要になります。
 家の外までは光ファイバーが敷設されていても、そこから先は昔ながらの電話線では困るのです。すべての部屋に迄まさにラストワンマイルまで光ケーブルが敷設されねばなりません。

 この街全体のデジタル化は、スマートシティなどと呼ばれたり捨て様々な試みもなされています。ですが、どうなるかわからない将来をあらかじめ決めた形ではなく、どのようになっても対応できる柔軟なインフラを作っておくことこそ、今やるべきことではないでしょうか。そして、これらが様々な産業を生み出す土壌になっていくことは言うまでもありません。

 住宅内の宅配ボックスとか、郵便受けとか、防犯カメラとか、競争はしながらも標準化された設備がより重要になります。宅配ロボットがAIをもっていても、家ごとに入り方も荷物の置き方も異なるようでは、社会は発展することが出来ません。人間から機械に代えていくための準備も必要なのです。


令和3年1月13日(水)

 

2021年01月16日|烈風飛檄のカテゴリー:idea