私は武士(サムライ)だ.....かな?!

 紛争地域はもちろんの事、マラソン会場、観光地、商業施設、とにかく世界のあらゆる場所でテロ行為が止まらない。まったく人類は、本当に進歩の道を歩んでいるのであろうか?

 日本国内ではオーム真理教のテロぐらいで、海外のように大きなテロが頻発してはいない。だが、海外に出かける事が当たり前になった昨今、日本人も常に意識しておくべきであろう。今の日本人は、『危険』と言う事に対して、あまりにも鈍くなっている。日本というくくりの中が比較的安全だからと言って、くくりの外も同じだと考えるのは、まさにくくりにとらわれていること(くくりへの撞着)に他ならない。教育の問題もあるが、それ以前に、いまの日本人は生きる事への緊張感が欠けているのでは無いだろうか?

 遙か昔、私の初めての海外旅行は、ヨーロッパだったのだが、ロンドンでは中央駅を出発したところで、駅で爆発(爆弾テロ)があったことを知らされた。スペインにいけば、警官がライフル銃を構えて列車に乗り込んでくる。警察署長が殺害されたとか何とか。よく分からなかったが、ま、銃口を向けられるのは良い気分では無い。なぜか怖さと同時に、怒りがこみ上げてくるのだ。 とにかく1ヶ月の放浪旅行中、何度も危ない目に合うところだったようである。

 それで癖になったのか、その後出張で海外に出かけても、よくそんな場面に遭遇するようになってしまった。空港で、火事やら何やらで退避させられたことは何度もある。アメリカでは、宿泊先のモーテル(簡易ホテル)に、夜中パトカーが突っ込んできて、ライフルを持った警官が飛び出してくるし。火山噴火で飛行機が飛ばず、空港に足止めされたり。テロ騒ぎで空港が閉鎖されたり。そうそう、飛行機が引き返したことも2度ばかりあったか。エンジン不調だから戻りますって、それから1時間以上も飛ぶなよな...。

 なかでも一番びっくりしたのは、2005年かな、例のロンドンでのテロ騒ぎである。まさにその時、市内にいた。訪問先でも、なぜか相手が話をしてくれないで追い出されるし、街中パトカーやらで騒然とする中、人々が走り回っていた。ようやく見たテレビ画面では、首相が深刻な顔をして何かわめいている。
 いま、まさにテロが起きているのだと分かったのは良いが、どうしようもない。タクシーなんて見当たらないし、どこに逃げれば良いのか検討もつかない。異常に興奮している自分がそこにいたのだが、一方で、異常に興奮しているなと冷静に見ているもう一人の自分がいて、妙に落ち着いている。 ま、死ぬも生きるも天の定め、武士(サムライ)は常に死を覚悟しているのだと、そんな事を思うかっこいい自分がいた。

 「武士道とは死ぬことと見つけたり」という意味は、武士たるものは、常に死を意識して、覚悟を持っているという事で有る。なら、私も武士だったのだろうか!

 冷静に、安全そうな方向を見極めて歩き、一時間ほど歩いてようやくタクシーをつかまえ、ホテルの方面が無事だというので乗せてもらった。がその晩は、恐ろしさと興奮で寝られなかった。武士も、後で怖くなるのだ!


 テロなど経験しないにこしたことは無いが、危険は常にそこにある。緊張感を持って生きることは、今の日本人に欠けていることではないだろうか。江戸時代250年以上もの間、割合平和な時代が続くなか、それでも武士たちは質素な暮らしに耐えながら、何かあったときに備えて心に緊張感を絶やさなかった。すべての武士階級の人間がそうであっとは言わないが、武士階級に限らず多くのサムライの存在こそが、あの偉大な明治維新を成功させたことは疑いもないだろう。
 戦後、さまざまな改革が進まなくなってしまったのも、このように核となるべき人材が日本社会にいなくなってしまったからである。遠回りでも人材を育てることからやらない限り、この自己中心的な風潮の蔓延した緊張感のない社会は変わらないだろう。



 危機はテロだけではない。東日本大震災以降、日本は災害列島とでも呼ぶべき時期に突入した。世界的にも、自然災害が各地で猛威を振るっている。戦後も比較的災害の少ない時期が続いていたため、日本人はここが災害列島である事を忘れていたのだ。それでも災害発生時の落ち着いた行動が、世界から賞賛されてもいる。事に当たって冷静に処する武士の生き方が残っているのだろう。もう少し進んで、日常の中でも災害などへの心構え、つまりは一定の緊張感を持って生きて欲しいものである。

 こうしてみると、日本人の気質が普段は集団農耕型に傾いていようとも、何か危機があると本質的な孤高武士型気質が顔を出す。この気質の本質を変えたくは無いと思う。すべての日本人に武士の心構えを持って欲しい。それが己の安全にもつながる。私は武士である、そしてあなたも...かな?!

一般的な日本人の気質構造図



参考資料

日本人の気質
  第5章 くくりへの病的撞着がもたらす社会病理
       社会病理を助長するもの -武士道とは死ぬことと見つけたり
  第7章 日本社会の特徴や問題の裏にある気質
       危機意識の欠如
  第10章 新しい時代へ
       サムライとは
       教育の再構築 -武士道教育が果たした役割


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平成27年9月26日(土)

 

 

2015年09月26日|気質のカテゴリー:外伝