自画像の誤認識と自文化愛

 本文で、日本人が自分たちが外からどう見られていると思うか、自分たちの姿をどう思うかという自画像について述べた。(第7章 日本社会の特徴や問題の裏にある気質-「社会的自画像の錯誤(誤認識)」参照) 日本人の描くこの自画像が、海外の眼との間でかなり違いがあることも指摘した。
 具体的にさまざまな世界ランキングにおける日本の順位を見ることで、その違いを具体的に感じることが出来る。そんな記事があった。

 日本は世界で何番目? 番付10選で見たこの国の“現実”

 さらには、こんなものまで。  英国人アナリストの辛口提言──
  「なぜ日本人は『日本が最高』だと勘違いしてしまうのか
   『日本の「おもてなし」は世界一だ、「ものづくり」は高く評価されている――これらはすべて妄想だ。バブル絶頂期に不良債権問題をいち早く予見した伝説のアナリストが、日本人の「自画自賛」体質を一刀両断する。』


 欧米の価値観や基準を尺度としたランキングや、日本に関するデータの不備など世界ランキングものは、ある種のお楽しみととらえておく方がよいのかもしれない。なにせ国連の幸福度報告書(2015)では、北欧が上位を占め日本もブータンも10位以内にはいない。幸福をはかるのは物質では無いだろうとのブータンの提案を受けて作られながら、結果は一人当たりGDPとか、結局はすべてが欧米の価値観に基づいてつくられている。

 2015年の幸福度ランキング上位10カ国は以下の通り。
   1位 スイス(昨年は3位)
   2位 アイスランド(同9位)
   3位 デンマーク(同1位)
   4位 ノルウェー
   5位 カナダ
   6位 フィンランド
   7位 オランダ
   8位 スウェーデン
   9位 ニュージーランド
  10位 オーストラリア


 辛口アナリストの言うことは参考にはなるが、日本人について正しく理解出来ているとはとうていおもえない。それを高く評価する日本人もどうかと思うのだが、自虐的、西欧崇拝の集団農耕型気質が良く現れているとも言えよう。

 これらさまざまな日本観も、逆に言えば、日本が外からどう見られているのか(誤解や偏見も含めて)を知る為には重要な手がかりであり、グローバル化においては必要なことでもある。


 そのうえで、もう一度「日本人の気質」に即して述べるならば、こういうことが指摘できよう。

・日本人の一部には、自己認識のゆがんだ自画像がある。
・誤った内容に対する批判・反論が日本側からでないために、なおさらゆがんだ日本人感が一人歩きする。 褒められると喜んで吹聴するが、けなされると無視してしまう、感情的な反応だけでは世界で生きていけない。
・日本礼賛を自画自賛ととらえるのは欧米的な発想で、日本人の発想を理解出来ていない証である。これは欧米人が自分たちは他の国や民族よりも優れて進んでいると思い込んでいるのとおなじく、日本人の自文化愛に過ぎないのだと日本人自らも知るべき。


 グローバル化という大風呂敷を広げなくても、同じ価値観やあるいは逆に偏見を持つのが、人間一般なんだと大きく構えよう。

平成28年(2016)5月16日

 

 

2016年05月16日|気質のカテゴリー:外伝