アメリカの分裂はくくりへの撞着でわかる

 アメリカ大統領が交代して、落ち着きを取り戻したかに見えるアメリカであるが、本質的には何も解決されていないのだろう。この混乱は、くくりへの撞着という視点で見ると案外簡単に理解できてしまうところがある。

 他民族、移民国家のアメリカを一つに束ねているのは、「アメリカ合衆国(USA)」というくくりであることは以前から述べてきた。何かあると最後には「USA」を連呼するのはその証でもあると。しかし今のアメリカを見るとこのUSAというくくりへの人々の撞着が弱まっているように感じられる。

 多民族の移民国家であるアメリカが一つにまとまるには、USAというくくりに体して強い撞着がなければならないはずなのだが、なぜその撞着が弱まっているのであろうか。今のアメリカの分裂を南北戦争当時の北部と南部の人々の価値観や文化の違いが未だに続く姓だという論cう゛ょうが多く聞こえてくるのだが、それは誤りである。確かに北部と南部の価値観の違いは一つのくくりではある。だが、それだけで今のアメリカ社会の複雑な分断状況を説明することは出来ない。

 今のアメリカは、実に多くのくくりが存在し、そのくくりに対して人々がそれぞれ強固な撞着を持っていることこそが、本質なのだろう。その意味では、トランプは決して分断を深めようとしたわけではなく、むしろアメリカ第一主義というくくりへの撞着を人々に促したとも言える。ただ、本人がそれを自覚していなかったようであるし、周囲もまた、そのようには理解できなかった。なぜトランプが掲げた昔ながらのUSAというくくりが働かなかったのか、そこに分断の正体つまりは、多くの異なるくくりへの撞着状態が見て取れる。

 保守とリベラルという単純なくくりで分断されているのではなく、もっと細かいかつ複雑に絡み合ったくくりが存在している。そのひとつが、IT企業の経営者に代表されるような大金持ちのくくりである。このくくりに撞着する人々は、USAのくくりにはむしろ反対でそれを壊そうとしている人々である。なぜなら彼ら彼女らは、国家というくくりよりも自分の企業というくくりこそが最も重要なくくりなのだから。口先では人権やリベラルを口にしながら、トランプのUSAくくりに真っ向から反対したのも、既得権たる企業経営というくくりを破壊されることを恐れたからに他ならない。

 マイノリテイや少数派が、貧しい労働者に味方しているトランプに反抗したのも、同様の理由である。USAというくくりへの撞着よりも、マイノリテイとか出身民族とかのくくりへの撞着が寄り強固だったのである。トランプのはくじんじゅうしが、それに拍車をかけてしまったのであり、主因ではない。

 移民国家とはいえ、これまでは、アメリカ市民になるつまりUSAというくくりに撞着する人々であったが、もはやそういう移民たちではなくなってしまった。違法だろうが何だろうが、潜り込んで自分たちの好きなやり方、暮らし方をすすめようとしているのだ。英語pさえもしゃべれない多くの人々にとって、そこはUSAなのではなく自分たちが自由期まっ間に暮らせる土地、地域にすぎないのである。この感覚、このくくりへの撞着が、分断の元になっている。

 他にも様々なくくりへの撞着を持つ人々が集まっていくつもの集団を形成してしまった。そして、それぞれの集団というくくりへの撞着がもはやUSAというくくりへのそれを上回っているのである。

 アメリカにかぎらず、これは実は世界の国々特に先進国と呼ばれる国でおきていることである。無論日本も例外ではない。ただ、救いかもしれないのは、戦後の日本は国家というくくりを破壊された中で様々なくくりが生まれたが、そのくくりの一つとして逆に国家というくくりへの意識が強まってきているのが現状である。それを全く築けないのは、既得権益にどっぷりとつかっていれば、その現状を維持するくくりに病的に撞着してしまう。そのために気づかないし、気づいても決して手放そうとはしないことになる。

 くくりへの撞着という概念で観察すると、アメリカの分裂もよく見えてくるはずである。それに気がついている人はほとんど見当たらないのは、残念なことである。

令和3年1月23日(土)

2021年01月23日|気質のカテゴリー:外伝