不安を感じやすいのになぜ危機意識が希薄なのか

 ロシアによるウクライナ軍事侵略のさなかに、安倍元首相銃撃事件が起きました。危機意識が希薄な日本人にも少なからず衝撃があり、脳天気にも少し動揺を与えたようです。

 ここでは、日本人の気質を考えたときに、浮かぶ小さな疑問について考えてみたと思います。

 日本人の基本的な気質としては、欧米人などと比較して、不安を感じやすいことは、脳科学などからも言われています。それが新奇性の少なさ、つまり新しいことなどに挑戦したがらない性格ともつながると考えられています。それを前提にすると、ふと疑問がわくのです。

 不安でビクビクしがちな小心者なら、なぜ、かくも脳天気な危機意識のない性格なのでしょうか?両者は相容れないように思えるのですが。

 実は関連する二つのことが言えるのです。一つは両価性と呼ばれる対象に対して相反する感情を同時に持つ事です。恋愛話ではよくでてくる、愛と憎しみの感情が同時にある状態です。つまり元々不安と脳天気が同居しているわけです。でどちらが強く行動や思考などに出てくるかはその時々によるというわけです。

 もうひとつが、性格の様々な要素が強く働く場合です。災害列島日本においては、大きな災害に遭ったとき、素早く立ち直るためにも「しかたがない」「諦めよう」といいきかせてしまうことが多いのです。これは精神衛生上も正しいことなのですが、それが強すぎると、日常においての危機に対しても、起きたら仕方が無いと考えがちなのです。

 不安から危機意識を持たなければならないような出来事は、今回のようにまれです。特定の人には関係しても、今回のように日本人全体が恐れを抱くような事は珍しいのです。それより、大雨、地震、洪水等々の方が遙かに多く発生して身近にあります。となれば、これらは、危機意識の希薄さ脳天気さに性格を傾かせてしまうわけです。

 このように考えると、あとは知性で個々の出来事と自分の行動を検証して、正すべき点があれば直していくことしか方法はありません。

 同じ感性基板を持ちながらも、置かれた環境によって思考や行動が変わることを死っておいても損はないでしょう。

令和4年7月15日(金)

2022年07月15日|気質のカテゴリー:補章